PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

凸凹師弟

関連キャラクター:アーマデル・アル・アマル

違う心が撚り合わせ
●恵みはやがて糧となり
 水とは、恵みだ。
 無から生み出すことはできず、与えられる時を待つしかできない。
 やっと得られた水の使い道さえ、決して自由になるものではなかった。
 そのために生きていけなくなるのなら。初めから、その程度で引かれてしまう運命なのだろう――。

 雨が降らない日が続いていた。
 いつも水を汲んでいた井戸も涸れかかっており、前線に出ない見習い達が訓練も兼ねて新しい井戸を探すことになった。
「…………」
 その人選が、ナージーには納得いかなかった。
 水脈を探すにも、道中での水は必要だ。貴重な水を割くのだから、見習いとは言え腕の長けた者でなければならない。井戸になれそうな水脈を必ず見つけられるほどの人材と言えば、後進の育成に当たっているナージーの目から見てもかなり数は限られていた。
 少なくとも、『彼』はその域に達していないはずだ。
 だというのに。
「よろしくお願いします、師兄」
 野垂れ死にさせるつもりなのか。何か算段があるのか。
 よりによって『あの』アーマデルと同行することになるとは。
(……いや、考えるな。上の考えなんて知るか。ただ与えられた任務をこなせばいい)
 色々な感情と思考が絡まりそうになるのを振り払って、反応を待っていると思しきアーマデルにナージーは向き直った。
「ひとつ伝えておく。足手纏いになりそうだったら置いていくからな」
「はい。どうぞそのように」
 ――人を煽る才能だけは一線級か?
 半分は忠告、半分は厭味のつもりで言ってやった言葉を、恐怖も反対もすることなく受け入れるアーマデル。
 『何もしない』だけで勝手に苛立ちを募らせる自分自身にも、いい加減嫌気が差してくるナージーだった。

 いっそ置き去りにしてやろうか――かなり本気でそう思っていたのだ。
「…………ほら」
 探索中。いよいよ水脈が近いとなったにも関わらず、アーマデルの足取りが覚束ない。
 これは下手に関われば『引かれる』。そう思いもしたのだが、ナージーは何故か自分の水筒を差し出していた。
「掘る体力が無いならこれでも飲んで休め。ここで死なれても俺が困る。死体を運ぶ仕事を増やすな」
「でしたら、自分で……離れます、から」
「少しは俺の思い通りになったらどうなんだ!」
 力の入らないアーマデルの胸倉を掴んで引き寄せると、水筒の栓を噛んで抜き、強引に水を飲ませた。

 結果として、無事水脈を掘り当てたナージーはアーマデルを背負って帰還することになる。
 それが抗い難い糸によるものなのか、己の意図によるものなのか。
 もはやナージーにはわからなかった。
執筆:旭吉

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