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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

カルウェットのゆりかご

関連キャラクター:カルウェット コーラス

鏡合わせ、背中合わせ
 きみとぼくに鏡は要らない。少しだけ形は違うけれど、隣に手を伸ばせば触れられる鏡像がある。お揃いの瞳を覗き込めば——ほら、重なった。
 流れ出すきみの音色はぼくのもの。きみにはバルーンフラワーの冠をあげよう。ふわふわの髪を紫色の星で飾ったぼくだけの星が笑ってくれた。

「わあ! ありがとう、ルナ」
「ずっと一緒だよ、ルウィー」

 溢れ出すボクの感情は君といられる幸せ。君には何をあげられるかな。ぼろぼろの花冠。真似っこして作ったけど、おんなじにはならなかった。
 君とボクに鏡は要らない。ただ、お揃いの色が嬉しかった。当たり前に隣にいたし、これからも寄り添えばぴったりと——あれ、ずれちゃった?





 瞬きをひとつ、ふたつ、みっつ。
 カルウェットが目覚めたのは真っ白な月が覗き込む森の中。隣にいた気がしていた誰かは影も形も残っていなかった。
 ふるりと体が震えたのは、ひとりぼっちの底を吹き抜けた風が冷たかったからか。夢の余韻が恐ろしかったのか。
「……帰る、するか」
 声に出して立ち上がる。どこへ帰るかなんて、歩き出してから考えればいい。そうでなければ引き摺られてしまいそうだったから。
 月だけが見ている箱庭の暗がり、紫色の星が揺れていた。つきり、と過去から響く痛みはカルウェットの足を止められず——桔梗が囁く『永遠の愛』は紙風船より儚く消えた。
執筆:氷雀

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