PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

貴石を辿る

関連キャラクター:シキ・ナイトアッシュ

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 アクアマリンの原石は、大抵が緑がかっているから研磨する時に熱を加えるのだと聴いた事がある。そして純粋な青に仕上げるのよ、と。
 不純物を何も含まず、何処までも澄み切った透明で美しい空色の清らかで何時も笑いさざめいている筈の双眸が、今は濁っていた。

『嗚呼、嗚呼。あなたの様な美しいアクアマリンがあれば、此の子の病気も治るかも知れませんのに』

 依頼で立ち寄った村で出逢った貧しい母子。
 少年は生まれつき眼病を患い、実の母の貌をも識らないのだと云う。
 軀も弱い我が子に少しでも良いものを食べさせてあげたいと春を売れど、何とか食い繋ぎ、薬代を捻出するのがやっとの事。其処に付け込んだ下卑た村の男に乱暴に抱かれ、そうして吐き捨てられた端金にだって『有難う御座います』と頭を下げる日々。

『お医者様が言ってましたの。石を浸したお水で眼を濯ぐと忽ち良くなるんですって』

 ゾッとした。女の心底羨ましそうな、其の眼差しに。
 今にも手が伸びて来て瞳を抉らり取られるのではないかという恐怖に苛まれ、シキは直様荷を纏め村を飛び出した。

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 じくり、胸が痛む。息が上がって、貴石化した脇腹がひり付く。
 だって私は識っているのだ。女の殺意が誰に向かっていたか。
 アクアマリンは『昔の戀人の愛を取り戻す』石でもあるんだもの。
執筆:しらね葵

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