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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

貴石を辿る

関連キャラクター:シキ・ナイトアッシュ

秘められた貴石
 出会う人たちからはよく、シキの瞳は宝石のようだと言われる。特に命を懸けた状況においては、何よりも美しいのだと。
 それもそのはずで、故郷では貴石の民と称される一族は皆宝石の瞳を持って生まれるのだ。それ故に乱獲や人攫いに遭いやすいのだけれど。
 シキも例外ではなく、彼女はアクアマリンの瞳を持って生まれた。

 体のあちらこちらに傷を負い、シキは痛みに苛まれながらも不自由な体を引きずり、どうにかして鏡に自分の全身を映し出していた。
 端的に言えば重傷状態の彼女は、先の依頼で必死に戦った。
 だから。
「こればかりは……仕方ないさ、ね」
 そっと脇腹に手を伸ばして、感情の伺えぬ声で彼女は呟いた。手からはみ出た箇所には、海をたたえた宝石があった。
 そう、彼女の瞳と同じ宝石アクアマリンだ。

 貴石病。
 そう呼ばれる病があった。
 貴石の民にのみ発症し、皮膚の一部が次第に宝石と化す。
「ああ、儘ならないものだねぇ」
 戦いに赴く前それは手で隠せたはずだが、今や覆い隠すことが出来ない。
 ――病の進行。
 その文字が頭をよぎり、シキは重い体を引きずって寝台の上に横になった。
 負った傷がじくじく痛み小さく呻き声を漏らした。

 貴石病は、シキが戦えば戦うほど――否、正確には命をかけた瞬間劇的に進行する。
「私はまだ大丈夫さ」
 やがて死に至る病。その最期は全身を宝石に覆われてしまうというものだ。
 シキの場合冬に発症し、ここまで進行してしまった。
 例えば。
 武器を捨て戦いから身を遠ざければ、進行は緩やかになるかもしれない。きっとローレットも友人たちも理解してくれるだろう。けれどシキは誰にもそのことを話してはいない。
 そっと脇腹へ手を伸ばす。
 今はまだ大丈夫だが、これが拡大していけば遠からず支障が出るはずだ。
 ――自分は後どれくらい自由でいられるだろうか。
 シキたち一族は宝石に愛されている。
 故に瞳に宝石を持って生まれ落ち、驚異的な身体能力を与えられる。
 その代償として短命であるとしても。
「それでも私は」
執筆:いつき

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