幕間
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混沌で何か撃ってみた
混沌で何か撃ってみた
関連キャラクター:マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ
- きれいな、ゆびさき
- りいん、りいん。鈴のような声の虫が嫋々と笑う夜。
弓懸を思わせる黒絹の手袋をはめた女が、美しい弓をなぞり上げる。
月明かりがぼうと落ちて、薄ら塗り込めた丹いグロスが、彼女のぞっとするほど白い肌を映えさせる。
──討つは不死者。
──撃つは銀の鏃。
刹那。墓石を押し上げ崩した亡者が、声にならぬ嘆きを響かせた。
強大な負の情念と死臭が辺りにむんと立ち込め、死肉を啄む鴉がそれに中てられて狂ったように羽を掻き毟った。
それを聞き及んだあと、ほう、と小さな吐息を最後に、もう彼女は根息を納める。
呻く亡者が呪詛を吐き散らし、足を踏み出すその瞬間。
震える空気の音を、枯れた枝を踏むその音を、彼女はその一切を聞き逃さない。
長き時を生きた彼女のゆびさき。目は開かずとも、一切の迷いはなかった。
──流星を思わせる軌道を描いて、ひゅうんと風を切った一射が、ただ無情に魔を撃ち滅ぼした。
かつて死を超越した者と添い遂げる覚悟を決めた彼女が──かつて不死を誇った残骸を見下ろしたあと。
ただ、そのきれいなゆびさきが、溝壑を填む亡者の目蓋をするり、と瞑らせた。
- 執筆:りばくる