PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

人形少女食事録

関連キャラクター:ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド

季節のにゃんにゃんパフェ◆初夏のマンゴーソース◆
 人に憧れる真白の人形は踊る、踊る。
 今日は何処へ行こうかしらとふわり微笑んだ。
 美しい花々に誘われる蝶の様に、貴方は幻想のどこかの街に立ち寄った。

 レンガ造りの街並に、規則正しく敷き詰められたタイルの床。
 靴底がタイルの床を叩く小気味よい音に耳を澄ませていたが、ふと貴方は足を止めた。
 可愛いブルーの屋根のお店。
 窓からそっと中を除けばウエイトレスがあっちこっちに飛び回って注文を取っている。
「今日は此処にしましょう」
 ドアを開けて、カランカランと鐘が鳴る。
「いらっしゃいませー!」
 元気な挨拶と人々の話し声が聞こえてくるその空間はまさに『人らしい生活』と言えるだろう。
「お一人様ですか?」
「ええ」
「お席にご案内いたします!」
 ポニーテールと笑顔が可愛らしい店員の後についていき、角の席に案内される。真っ赤な一人がけのソファはふかふかで、座り心地の良さに思わずぽんぽんと、叩いてふふっと笑い声が漏れた。

 差し出されたメニューをじっと眺めてみた。
 どうやら此処はスイーツが売りらしく、頁を捲る度にケーキ、タルト、オムレット、沢山のスイーツのスケッチが記載されていた。
 その中で特段目を引いたのはパフェのコーナーの一つ。
「これを頂けるかしら」
「はい、かしこまりました!」
 ウエイトレスが厨房に注文を伝えに行き、暫くすると銀の盆に背の高いパフェグラスを乗せて帰ってきた。

「お待たせしました! 季節のにゃんにゃんパフェです!」
「ありがとう」
 一礼して去っていくウエイトレスに、軽く頭を下げ貴方は目の前のパフェに向き直った。

 透き通ったパフェグラスにたっぷり敷き詰められたの生クリームとコーンフレーク。
 オレンジが花開いたように、くるりと廻って、マンゴーソースは隠し味。ガトーショコラを一切れ刺さっているのは驚いたけれど、オレンジとチョコレートの相性がばっちりなことは有名だ。
 
 そして真ん中にバニラアイスが前後二つ。
 後ろはぴょこんとしたチョコレートの足が覗いている。
 前は薄いチョコの耳をピンと立てた可愛らしい猫が得意げな顔して陣取っていた。
 さぁ、いざ実食とスプーンを手に取った貴方は暫し固まる。
 事前にメニューで確認してはいたものの如何せん可愛すぎるのだ。
「……お尻の方から頂きましょう」
 顔にスプーンを突き立てる勇気は無かったので、恐る恐る後ろのバニラアイスを一掬い。
 マンゴーソースを絡めれば口の中にバニラアイスの優しい甘さとマンゴーのさっぱりとした程よい酸味が広がり、どんどんスプーンが進む。
「……あら」
 後回しにしていた顔がちょっと溶けてしまったのはご愛敬。
 
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