PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

人形少女食事録

関連キャラクター:ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド

夜市と食べ歩き
 ふらりと訪れた街で、あなたは夜市が開催されると耳にした。
 曰く――日が沈む頃、通りの両脇にずらりと露店が並ぶ。そこには飲食物を扱った店以外にも、雑貨を扱うもの、小さな魚を掬い上げる遊戯……そういった様々な店が雑多に並ぶのだという。
「楽しそうね」
 中には行列になるほど人気がある店もあるのだと聞いて、あなたは日暮れを楽しみに待つことにした。

 やがて空が茜色に染まり夜へと変わっていく時分。
 あなたが訪れた時、その通りは行き交う人々でいっぱいだった。露店が所狭しと並び、あちらこちらから呼び込みの声と共に良い香りが漂ってくる。
 あなたが最初に手にしたのは飲み物だ。
「今日採れたての果物を絞った物だよ!」
 新鮮な果物がいくつも並び少し考えて、悩んだあなたはおすすめされたミックスジュースを手にしたのだ。容器に注がれ氷をいれたそれは冷たくて、様々な果物の味があなたの舌を楽しませる。
 もしかするとあなたは少しお行儀が悪いと思うかもしれない。
 けれどこの夜市では皆食べ歩きを楽しんでいるのだ。だからあなたは彼らにならい、そのまま飲み物を片手に歩き始める。
 その頭上では、通りを照らすように吊られた赤い提灯が風に揺れている。

 次にあなたが向かったのは行列が出来ていた店だった。買い終えた人々は笑顔で何かの包みを手にしている。
「あれを頂けます?」
 少し待ってからあなたは店を後にする人々が持つ物を示した。店主は焼き目のついたパンらしきものに切り込みを入れて、その間にたっぷりの肉を詰め込んだ。
 薄紙に包まれたそれはずっしりと重く、あなたは服を汚さないようにと通りの隅でそっと食べてみる。
 一口かじれば口の中にじわりと肉汁が広がる。カリカリとしたパンとほろほろになるまで煮込まれた肉がよく合っていた。
 確かに皆が笑う理由もわかるかもしれない。
「美味しい」
 そう呟いた言葉は街中の喧噪へ消えていく。

 夜市で行き交う人々は皆笑顔だった。その手には食べ物に風船に、様々なものがあった。
 普段よりも軽やかな足取りで、あなたは食べ歩きを続けてみた。口直しに果物の切り売りを食べてみたり、金魚掬いに挑戦してみたり。最後に飴がけされたリンゴを手に帰路へ着く。
 赤い提灯に背を向けて歩くあなたは名残惜しげに考えた。まるでお祭りのような空気の中で味わう食も中々良い物だと。
執筆:いつき

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