PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

かぜのなか

風の足取りを追うだって?
そいつは無茶な注文だ。
第一、かぜには、足はない。
例えどんなに目を凝らしたとて、
草木の揺れが、精々さ。


関連キャラクター:サンディ・カルタ

裏路地に光る風
 背広の男が嫌がる女の腕を無理に引っ張る。
 彼女はこの裏路地には珍しい作業着で長い髪を隠す様に帽子を被っていたが、酔った男にぶつかった衝撃で地面に落ちていた。
 自分がふらついてぶつかったと言うのに男は彼女を怒鳴ろうとして、ナンパに切り替えたのだった。
「そのぐらいにしとけよ、おっさん」
 男が一緒にホテルへ行けば見逃してやると言い掛けた時、その声は降ってきた。
 男が不機嫌そうに頭上を見上げた次の瞬間には風圧で地面に倒れ伏していた。
 残ったのは訳も分からない女と赤毛の少年。
「……もしかしてサンディ?」
「早く店に戻んな。修理屋のおっちゃんが困ってたぜ」
「おい待てよ、クソガキ! 俺が目ぇ付けた女だぞ!」
 衝撃からようやく起き上がれた男が逃すまいと立ち上がって女を引き寄せようとする。
 それをサンディが男の手を遮るように壁を強く蹴って睨み付ける。
「お前からぶつかっておいて、抜かすなよ。それとも財布ごと奪われたいか?!」
 小柄なのに妙な迫力を持つサンディに怯んだのだろう、男はありきたりな捨て台詞を吐いて走り去った。
「あの、ありがとう。助かったよ」
「別に。たいした事じゃない」
 成金が、と吐き捨てたサンディはそのまま軽く手を振ると裏路地の雑踏に紛れていった。

「……ていうのが、アタシとサンディの初対面。噂には聞いてたけど、本当に優しい子だよね。なんでか怪盗ぶってるけど」
ーーよろず修理屋のアルバイト、エリー
執筆:桜蝶 京嵐

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