PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

恋する乙女の蒼い日々

関連キャラクター:華蓮・ナーサリー・瑞稀

Stella
●第一幕
「……酷い、酷いのだわ……!」
 慣れないお酒を呑み過ぎれば、どんな良い子でも本音は出る。
 普段から仮面を被っている訳ではない。普段から絶えぬ不満を抱えている訳ではない。
 唯、それでも――ふとした瞬間に『彼』の視線が他所に移ったら。『彼』が目移りを繰り返すような男なら。
 年頃の恋する乙女からすれば――それがどんなに物分かりの良い、良い子であろうとも――積もり積もった感情は憤懣やるかたなさを抱えるのも致し方ない事であろう。
「……飲み過ぎですよぉ」
「うっ、うっ……分かっている、分かっているのだわ……!」
 声を掛けてきた酒場の店員をちらりと見て華蓮はより暗鬱とした気分になった。
 年の頃は華蓮と大差ないだろう。可愛らしいディアンドルから覗く肌は白く、胸はこぼれ落ちんばかりだ。
 目鼻立ちはくっきりしていて活発そうで――如何にも『彼』が「可愛いね、デートしよう」等と宣う事必至である。
「彼氏と喧嘩でもしちゃったんですか?」
「……彼氏、ではないのだわ……」
「……………好きな人と喧嘩?」
「喧嘩、でもないと思う……のだわ」
 好きな人は否定し難い。
 そして、喧嘩――はしていない。
 但し、今日の華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が「何か怒ってる?」と来たレオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)を袖にしたのは確かである。
 本当は何時ものように――痛む胸を抑えてでも笑顔で居たかったのだ。
 物わかりが良くて素直で可愛らしい――彼のそう思う『華蓮』で居たかった。
 でもどうしてか、今日だけはそれが上手くいかなかったのだ。きっと大した理由はない。ないに違いないのだけど。
「……私で良かったら少し位はお話聞きますよ?」
 時間帯もあって店内に多くの客は居なかった。
 何処となく有閑な時間より、珍しい客の可愛らしい悩みに応えたくなる気持ちは理解出来る。
(……そういう話って、言ってもいいのかしら?)
 華蓮は少し悩んだ。少し悩んだけど、今日の彼女は『悪い子』だから――
「――レオンさ……私の好きな人が、すっごい浮気性で!
 それはもう、日々大変な事になっているのだわ……!」
 ――酔いのついでにそんな風に話を始める。
「あらあら」
 少し目を丸くした店員は相槌を打ちながら華蓮の『悩み』を聞き始める。
 そんな酒場の入り口では銅製の看板が吹き付けた風に揺れていた。

 ――『BAR 星の光』。
執筆:YAMIDEITEI

PAGETOPPAGEBOTTOM