PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

〜希望ヶ浜グルメ巡り〜

関連キャラクター:イルミナ・ガードルーン

激辛ラーメンVSイルミナ・ガードルーン
『鬼地獄溶岩ラーメン』。希望ヶ浜のとある小さなラーメン屋で提供されるという一品。
 名前だけで敬遠してしまいたくなるその一杯。だが、至高の一杯であると噂されたそのラーメンが、今。イルミナの眼前に差し出された。
「お待ち」
「う……ウス」
 赤い。赤いというか赤黒い。スープも、麺も、上に載っているネギもチャーシューも何もかもが。圧倒的威圧感。圧倒的暴力。丼に入った麺とスープの集合体がこれほどまでの圧を放ってくるという経験は、これまでのイルミナには無かった。
「に、匂いはどうっすか……?」
 轟々と立ち昇る湯気に、イルミナは顔を近づける。
「クッ……!!」
 鼻に侵入してきたソレは、イルミナの全身に危険信号を発せさせるには十分だった。全身から汗が噴き出す。鼻が痛い。店員に渡されたゴーグルがめちゃ曇る。
 誓約書を書かされ、目に入らない様に食べる際は必ずゴーグルを着用してくださいと念押しされたのは、脅しでは無いようだ。
「……フゥーッ……」
 イルミナは大きく息を吐き、臨戦態勢を整える。箸を取る。レンゲも取る。ゆっくりとレンゲを赤き溶岩の如くスープに沈め、箸で業火の如く赤々とした麺を掴み取る。
「頂きます……ッス……!!」
 覚悟を決め、イルミナはスープと共に麺を口へ運ぶ。そして咀嚼。
「カッ……!! ハッ……!! ほぐ、ふぐぇ……!! アカ、アフゥ……!!」
 凄まじい熱量。凄まじい辛み。というか痛み。地獄の鬼でもここまではしないだろううという苛烈な攻撃に、イルミナは必死に耐える。
「(焦ってはダメっす、焦ったら……!! 気管に入ったら全ての終わり……!! この戦いを生き残るには、冷静さを保たなければならないっす! そう、冷静さを……!!)」
 自ら勝負を仕掛けた相手から逃げるという選択肢はイルミナに無かった。イルミナはまず、初めの一口を無事飲み込むことに成功した。
「ふぅ……フゥー……いや確かに美味いっすね、今から思うと……!!」
 そう。確かによくよく考えてみれば味は美味かった。凄まじい辛みの中には確かな旨味とコクがあった。多めの脂が浮いていた様に見えたが、クドサも感じない。
 が、それどころでは無かった気もする。
「イルミナは勝つっすよ……絶対に……ッ!!」
 長い、長い闘いだった。激辛ラーメンに水は厳禁。かと言ってデザートやドリングに逃げては真の勝ちとは言えない。故にイルミナは孤独に、己の力だけで闘い、そしてついに勝利したのである。
「完食ッス……!! ごちそうさまでしたッス!!」
 尋常ならざる量の汗も、今となれば勝利の勲章に等しい。
「見事だ、俺のラーメンを完食するとはな……実は来週から、絶・悪鬼喝采地獄超溶岩ラーメンを販売するんだ。また、食べに来てくれるかな?」
「……………………」
執筆:のらむ

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