PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

よろずな日々

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

赤と青のチェス盤
瞼の裏に映る景色の全てが、今起きている事とは限らない。
例えるのなら夢、若しくは過去の何処かで経験していたのかもしれない断片の様な何か。

『故に、私は斃さねばならない』

赤を纏った女は云った。
ヴェルグリーズを構え、祈る様に目を伏せる。彼は彼女の願いの元、其の長い髪を断ち切った。

『だからこそ、僕は認められない』

青を宿した男は云った。
惨めにも地に伏せ、此方を見上げる赤をただ見下ろす。彼は彼の願いの元、其の命を断ち切った。
地に落ちる赤を眺めつつ、男は軽く剣を振る。僅かに残っていた筈の血も滑り落ち、牢獄の床に色を付けた。
灰の床が一滴、また一滴と色を深める。この色は、男の瞳から落ちる雫だった。

『正しい戦なんてない、分かっていたつもりだったんだ』
『ただ僕は……違う道を、認めて欲しかった』

聞こえてくる男の独白は、ヴェルグリーズにどれだけ届いたか知れない。
或いは何も聞こえていなかったのだろうか。細い首筋に、銀色の刃が触れる。
細い傷口からは剣を伝って、嗚呼、赤が。

『………姉さん』

赤が散る、青を塗り替えて。


持ち上げた瞼は何時もより重く感じた。何時の間に眠ってしまっていたのかも知れない。
ただ、ヴェルグリーズは"瞼の裏"を思い出していた。古いあの日に断ち切った、赤と青の縁を。

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