PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

よろずな日々

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

ヒトガタ

 命の意味。
 その、答え。


 奪うだけが命であろうか。
 奪われるだけが生であろうか。

 その問いは覆されることはなく。ただ剣としての生涯を甘受している。
 剣を振るうならば多くは『奪う』意味を理解し、『奪われる』覚悟を持ったものにこそその才は授けられる。
 痛む胸の意味はまだわからない。
 ひとのなり損ないと詰られれば、そうだと答えるしかない。そんなヒトガタのなにか。それがヴェルグリーズたるいきものだ。
 涙の理由も。怒りの意味も。とってつけたように、解ったふりをして。そうして人のなかに混じりきれずに浮かんで、己の弱さをまたひとつ理解する。
 その心の理由がわからない。
 共感に欠けると言われれば苦笑せざるを得ないが、その苦笑すらもひとの真似だ。
 これまで自分を得た誰かの感情の模倣の繰り返しで『ヴェルグリーズ』は存在している。
 無感情な誰かではなく、ちゃんと生を謳歌した誰か。故に彼の感情は押し付けで傲慢だ。
 散々だ。ああ、本当に。
 ひとの真似事は難しい。それ以上に、正解がないから解らない。
 しあわせだと。さいわいだと。そう仄かに笑ったときでさえ、己の不確かな感情を呪わずにはいられない。

 ――ああ。

 ため息ばかりがこぼれていく。
 夢を見ていた。
 人のように生きる夢を。大切な友と、人として生きる夢を。
 けれどそれは叶わない願いで。愚かな程に己の立ち位置を知らしめる醜い劣情だ。
 俺はひとにはなれないし、ひとと同じにもなれない。

 ヒトの痛みを解ったようなふりをするなよ――たかだか、道具の分際で。

 それならば。あの時、感じた感情のすべては、偽りだったのだろうか?
 わからない。

(――どうすれば、)

 この気持ちが正解だとわかるのだろう。
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