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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

よろずな日々

関連キャラクター:ヴェルグリーズ

主への手紙
 別れの剣ヴェルグリーズ。
 彼は数多の主を渡り歩いてきた。

 例えばある時は幻想郊外領主、ある時は鉄帝の軍人、そしてその先で復讐に染った魔種の女の手にも渡った事もあり、その末路に当時の特異運命座標の男の手に渡った。
 あの頃は手足もなく助けてもらった礼も出来ずにいた。せめて武器として役に立とうと思ったのにあの男は「これは保管してた方がいいだろう」とヴェルグリーズをローレットに送ってしまったのだ。
「あれからまた運ばれたり、盗まれたり、色々あったけれど」
 あれから何年、何十年……はたまた百何年と経っているのかもしれなくて、この肉体を得た頃には元の主を探す事も難しくなっている。
「あの時は本当に折れるかと思ったから……助けてもらったお礼が言えれば良かったんだけどな……」
 あの特異運命座標は……良くて老いてしまったか、死んでしまっているかもしれない。せめて名前を聞いていれば手紙でも何でも書けたかもしれないのに。
 ……うん?
「なんだ、簡単なことじゃないか」
 ここは情報屋ローレット。名前こそわからなくても特徴や仕草、外見も提示すれば……当時の彼に辿り着けるのではないだろうか?
「彼だけじゃない。前の主達の事ももう少し知ってみたい」
 直接関わるのはもう難しくても、どんな人物だったのか……他の人達からの目線でも知ってみたいと思った。
 自分を使ってくれた主は全員良く見えてしまうもの。だからこそ何故そんな末路を辿ってしまったのか……無念ならない事も少なくはない。
「よし、ちょっと頼んでみよう」

 それは彼が彼自身のルーツを探す旅の始まりかもしれない。
執筆:月熾

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