PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

おまかせ!

関連キャラクター:シキ・ナイトアッシュ

雨宿り
 ぴちゃんと頬に当たる冷たい感触にシキは目を瞑った。空を見上げればいつの間にか曇っていた様で雨の雫が一つ、二つと落ちてきてやがて勢いを増す。
「わっ、振ってきちゃった」
 近くの木陰に雨宿りして様子を見る。生憎と今日は傘を持ってきていない。
 ふとセピア色の光景が蘇る。忘れる筈もない光景。

 あの日も雨が降っていた。振り下ろした刃はびっくりするくらい冷たくて、なのに迷いは無くて。
 夕陽みたいに綺麗だった柘榴石は粉々に砕け散った。
「……寒いな」
 ぎゅうと上着を手繰り寄せる。肌寒いのは屹度雨の所為だけではないだろう。
「……?」
 すり、と足元にすり寄る感触がしてみてみると栗鼠がじいっと此方をつぶらな瞳で見つめていた。
「君も雨宿りかい? 私もだよ」
 ふっと微笑んで手を伸ばすと小さく鳴いて、腕を伝って登ってきた。
 ふわふわの毛並みと温かさがひどく心地よかった。
 マフラーに潜り込んできた栗鼠に「くすぐったいよ」と笑いつつ追い出すことはしなかった。

 やがて振り続けていた雨は止み、雲の切れ間から光が差した。
 ぽたぽたと葉から伝い落ちた雫は何処までも透き通っている。
「上がったようだね」
 栗鼠の頭を一撫でして、シキは立ち上がった。
 腕を枝に伸ばしてやり、栗鼠を家へと帰らせてやる。
「じゃあ、私は行くね。また会おう」
 笑った藍柱石は青空みたいに綺麗だった。
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