PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ゴリョウ亭の今日のごはん

関連キャラクター:ゴリョウ・クートン

マリ屋vsゴリョウ亭?
 カツ丼を頼もうか!そう挑戦的に言い放ち、ゴリョウ亭を訪れたのはマリア・レイシスだった。
「ほう?」
 店主、ゴリョウ・トークンの目に好戦的な光が宿る。マリアもまた飲食店、串カツマリ屋のオーナーである。その彼女がカツを頼む……これは真剣勝負に他ならない!
「ぶはははっ、承ったぜい!期待してくんな!」
 料理人たるもの、客を選んでで品質を変えるなどということはしない。だが、腕を振るうその指先に、眼光に、温厚なゴリョウをしてなお滾る戦意が滲み出るのは致し方ないことだった。
「な、なんだか今日のゴリョウ君は迫力が違わないかい?私何かした?」
 一方のマリアはただただ困惑していた。

 厚い肉の筋を断ち、胡椒を振りかけるまでの仕込みが施された肉を取り出し、塩を振る。
 肉汁を逃がさぬ気遣いのひと手間ののち、小麦粉で化粧をし卵と絡める。優しく生パン粉の上に寝かせて布団を書けるようにまぶせば、あとは揚げるのみ。
 シャアア。落とした生地で油の適温を確認したら、生トンカツを油に沈める。油跳ねなどものともせず、極力静かに。
 そうしてきつね色になるまで裏表を返しつつ揚げている間に、別鍋に玉ねぎを炒め、出汁を加えて沸騰させる。
 トンカツが出来て油を切る数十秒の間に丼に白米をよそい置き、余分な油を落としたカツをザクザクと切り分ける。よく研いである包丁は衣を崩すこともない。
 切り分けたカツと溶き卵を出汁の鍋に加えてひと煮立ち。出汁を吸った卵がふわふわとカツを包み込み、しっとりとした食感を生みだすのだ。
 これを汁ごと白米の上に。彩りに三つ葉を散らして完成だ。

「あいよおまちどう!」
「ああ、お出汁のいい香りが食欲をそそるね!いただくよ!」
 カシュッ……ほんのり揚げたての食感が残りつつ、出汁の効いた一口目は至福の極みといっていい。
 本能に訴える美味、それを味わうマリアは屈託のない笑みで箸を進め、それを見守るゴリョウは確かな手応えを感じていた。

「ああ、満足だよ。ご馳走様、ゴリョウ君!」
「どういたしまして、だな。うちのカツはマリ屋のオーナー様のお気に召したかい?」
「うぇっ!? う、うん美味しかったよ?」
「ぶははははっ、わりぃわりぃ。ちょいとこっちが熱くなっちまってたか。何でもねぇ、また来てくれよな!」

 美味しいものを食べ、作る。そこに勝敗などなく、WIN-WINの関係だけがあるのだった。
執筆:鴛乃

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