PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ゴリョウ亭の今日のごはん

関連キャラクター:ゴリョウ・クートン

アーリアと卵粥
「うう……」
「おう、いらっしゃ……おい、大丈夫かい?」
「大丈夫よぉ、でもちょっと昨日飲み過ぎちゃって……」
 時刻は朝方、厨房で野菜の下ごしらえをしていたゴリョウは顔色が良くないアーリアを出迎えた。
 アーリアの酒好きはローレットでも有名だが、いかんせん好きすぎて翌日には二日酔いになっていることも少なくない。
 月の魔女と称される美貌も、今に於いては青白く目の下に若干隈が出来てしまっている。
「という訳で、私、お腹に優しい物が食べたいわぁ」
「ぶははははっ! 任せてくんな!」
 
 かちゃんと卵をボウルに叩き割り、箸で空気を混ぜながら解きほぐす。
 鍋に水を入れて、白だし、醤油、みりんをしっかりと分量を量って入れる。
 鍋を火にかけ、艶やかな白米を投入し沸騰してきたところで火を一旦弱める。焦ってはいけない。
 米が柔らかくなってきたところで、中火に戻して卵を手早く回し掛ける。
 卵を全体に絡ませるように切るように混ぜ、固まったところで火を止め小さな土鍋に盛り付け、最後に小口切りにした葱を散らせば――。

「注文の卵粥だぜ! 熱いから気をつけな」
「ありがとう、とっても美味しそうねぇ」
 手を合わせ、小さく頂きますと呟いてアーリアは匙で卵粥を掬う。
 湯気がほかほかと立ち、ふぅふぅと冷ましてからそうっと口へ運んだ。
 出汁の上品な香りがまず広がって、旨味をたっぷり吸った米と卵が口の中で解けてふわふわ踊る。
 卵は固すぎず、それでいて柔らかすぎず、絶妙な硬さでトロトロになった米と絡んでいた。
 飲み過ぎで疲れた身体を労る様に、隅々までぽかぽかと温まっていく。
 優しい味と温かさに身体だけでなく、心まで温まる様だった。

「本当に美味しいわぁ。身体に優しいってこういうことを言うのねぇ」
 ぐぅっと身体を伸ばして、また一口、二口と卵粥をゆっくりと食べる。その度に自然と笑みが零れた。
 やがて、土鍋の底が見え卵粥を完食したアーリアは備え付けの紙ナプキンで口元拭い、再度手を合わせた。

「ごちそうさまでした。ここの卵粥、とっても気に入っちゃった! また食べに来るわね」
「おう、そりゃなによりだ! しかし、飲み過ぎもほどほどにな?」
「はぁい」
 舌を出し、肩を竦めるアーリアがまた二日酔いでゴリョウ亭を訪れるのはまた別の噺――。
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