PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

食育記録

関連キャラクター:ジェック・アーロン

この幕間はフィクションであり、実在の店とは関係ありません。
 再現性東京、カフェ・ローレット。
 夜妖退治の仕事をを終えたジェックは、グラスの底に僅かに残ったアイスティーをストローで啜ると「おなかがすいた」とぽつり零す。
「何か軽食でも頼みましょうか?」
「なんか違うんだよね。肉とか、なんかこう……もうちょっと重いやつ」
 向かいの席で珈琲片手に希望ヶ浜経済新聞を読みながら寛治が問うも、ジェックは気乗りせず。
「なるほど。で、あればその案件私にお任せください」
「いい店知ってるの?」
 旨い飯、食わせてやりましょう――寛治の眼鏡が光る。

「師匠のいる所拙者あり!」
「来たぜヒュー! 新田さんゴチになりやす!」
「……呼んだ覚えはないのですが、まあジェックさんもお二人ならば歓迎でしょう。あ、伊達さんは成人ですので私と会計折半で」
「えっ」
「よろしく、チヒロ」
「やったー! ありがとうございます世界の伊達千尋殿!」
 カフェ・ローレットからバスに揺られることしばし、寛治がジェックを馴染みの店にと連れてくる。
 何故か途中で出会ったルル家と千尋も着いてきたがまぁよしとして――エレベータを上がった先でおかえりなさい、と店員に温かく迎えられる。
 手書きの今月のメニューから寛治があれもこれもと注文していく中、お通しはサラダかナムルかと聞かれ、全員寛治おすすめのナムルを選ぶ。
 寛治は店員に任せた日本酒、千尋はビール、未成年のジェックとルル家は特製のぶどうジュース。ワイングラスに入ったそれはまるで大人みたいだとジェックの心をくすぐった。
「乾杯!」
 寛治の妙に手慣れた乾杯の音頭からはじまり――その店の料理は、なるほど何一つ外れない。
 塊の肉は堅いものだと思っていたジェックにとって角煮の柔らかさは衝撃的だったし、店主の伝手で手に入れたという干物は艶々と油で輝き美しかった。
「そしてこれが今月の私の一押しです」
 どんと置かれた肉の圧。旬のアスパラを肉で巻き、更にもう一度肉で巻く――暴力的な程の旨味は、ジェックにとって衝撃としかいう外なく。
「これは……反則だね、うん」
 いざ二個目を、と箸を伸ばし――皿に残った肉の数に、ジェックは絶望する。
「……ねぇ、これあと二個しかない」
「私はいつでも食べられますので、お三方でどうぞ」
 ジェック・ルル家・千尋の目線がかち合う。
「うおー唸れ拙者の右手!」
「チヒロとルル家相手だって、今日ばかりは負けないよ」
「Do or Die――クリティカルで勝つだけだな」
「あ、私次の日本酒を」
 淡々と飲み進めながら次のファンド対象をaPhoneで物色する寛治はさておき。
 肉戦争の参加者三人は無言で頷くと、腕捲りをし――さて、じゃんけんの結末やいかに?

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