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シキ・ナイトアッシュのkzgr_による3人ピンナップクリスマス2023
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シャイネンナハトと言えど、豊穣郷ではまだ余り馴染みがない為か新年祝賀が優先されるのだろう。
特に神霊達にとってシャイネンナハトとは賀澄――霞帝の生誕の日であり、その意識が強いのだ。
生誕祭の準備を勧めながらの新年祝賀に向けて重箱におせち料理を詰めながらその時を待つのが黄龍や瑞神の日々だった。
「手伝いに来たよ」
にこりと微笑むシキに「良く来てくれましたね」と穏やかで落ち着き払った口調で告げるのは赤子の姿の瑞神だ。
折れた耳にふわふわとした尾を有する神霊は『省エネ』モードなのだろう。赤子の姿で炬燵の前にちょこんと座っている。
「料理は黄龍が用意してくれます。シキも黄龍が持ってくる食材を鮮やかに詰め込みましょう」
「料理は手伝わなくっていいのかな?」
「はい。わたしも手伝おうと思ったのですが、黄龍は風のような早さで作業を行なってしまいますから、手も足も出なかったのです」
料理になれたのはこの地に馴染みない賀澄の為だった筈だと瑞神は言った。
シキはふとあの朗らかに笑った豪胆な帝を思い出す。彼は旅人であり、豊穣よりも遙かに優れた文明レベルの世界からやってきたとは聞いている。
ならば食生活も大きく違ったのだろう。どちらかと言えば再現性東京の方がなじみ深そうな賀澄を思い浮かべてから「じゃあ、この場所では黄龍が『おふくろの味』なんだね」とシキは頷いた。
「うむ。吾が賀澄の胃袋を掴んだからのう。そうそう外には出ていくまいよ」
「……本当かなあ」
割烹着姿の黄龍をまじまじと見詰めるシキ。黄龍はシキに三角巾や割烹着を手渡してから「外に出て行ってから帰ってくるのは確かじゃからなあ」と独り言ちた。
「うーん、まあ、帰巣本能はありそう……」
「シキもじゃな」
「え?」
「シキも必ず吾の所に戻ってくる。吾と瑞はそうやって待っているのだからなあ」
楽しげに笑った黄龍にシキは「そうだね、必ず帰ってくる」と笑ってから、山盛りのおせち料理を見て「あっ!」と声を上げた。
「もしかして、このおせちの量って神使の分も含んでる?」
「如何にも。友を連れて帰ってくると良いぞ」
豊穣郷で母親のように料理をたんまり用意して舞っているからと黄龍は自慢げに笑った。
その傍らで酢の物を摘まみ食いした瑞神が「おいしいです」と呟いたのは見て見ぬ振りをしておこう。
*SS担当:夏あかね