イラストSS

「星穹？」
　寝ちゃったの、と声をかけても彼女は起きることはない。
　どうしたものかなんて考えることはなくて、むしろ穏やかな寝顔を見るだけで安心してしまうのは夫の特権というものだろうか。
　無茶の対価に眠る時間が人より多くなってしまった彼女だけれど、ようやく人並みくらいなのではないだろうかなんて考えてしまうくらいには頑張り屋で。この間は子供たちの為にお弁当を早起きして作っていたような気さえする。
　それに今日は子供たちとクリスマスケーキを作りたいからといって、スポンジ生地やクリームの準備もしていたような。結局のところ頑張り屋な一面は変わっていないらしい。
「よいしょ、っと」
　実のところそんなに重いとは感じていない。それでも彼女が気にしてしまうから、彼女の頭を肩に凭れさせてその右手を握る。
　彼女の右側に立つのは、彼女がそれを望んだから。これからも温いままの右手を握っていてほしいのだと照れ笑いを浮かべていたっけ。花婿が花嫁を連れるのも右側だということを、彼女は知っているのだろうか？
　願わくば、これからも。彼女の右側に在り続けるのは自分で居られるように。そっとキスを落とした。
「愛してるよ、星穹」

※SS担当：染