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最期に伝えたかった、伝えられなかった言葉は
最期に伝えたかった、伝えられなかった言葉は
イラストSS
午前1時30分。
幻想の街角、端から数えれば9809番目あたりの――。
名もなき場所にイーリンは一人佇む。
「……」
その日、不覚にも彼女は事実を隠せずにいた。
人である部分が魔力へ置き換わっていく。
体重も、記憶も、想いも、寿命も。
何もかも。失われようとしている。
「あ、どーも。通りすがりの一般人Bです」
そこへ赤い翼をはためかせ、あの日と同じようにミーナが降り立った。
「……うん?」
偶然の再会。
奇しくもそこは、二人が初めて出会った場所。
けれどもあれから、六年の歳月が経っている。
「風からここに死神が必要だと聞いて」
「えっ、と……」
光の消えた瞳。
真実を知る友として、ミーナは寄り添う。
「分からなくていい。忘れてもいい。私は一般人だから」
でも、側に居させて。
~~~
ベンチに座り、ただ一緒の時間を過ごす。
彼女が元のイーリンに戻るまで。
「それで干し肉が――」
聞こえ始める寝息。人が生きるための活動。
「……イーリン」
最初の出会いは、すれ違った。
この再開も、残らない最悪の形だけど。
「大切な人。私にはきっともうすぐ終わりが来るけど……もう、間違えない」
衰えた体で何とか抱き上げ、憩いの書庫へと眠り姫を連れていく。
最期に伝えたかった、伝えられなかった言葉を添えて。
「またね。――」
※SS担当:pnkjynp
