イラスト詳細
貴女に届ける、一つの『声』
イラストSS
●All you really need is relaxation, But a little cookie's now and then doesn’t hurt.
脆くも堆く書物で出来上がった紙の城には窓が無く陽が差し込まない。然も黙々と書類仕事――ただ、ただ只管眼を通しては署名を行う様な単調な職務は時間の経過が判り難く、もう随分と時間が経ったのか、将又数分しか経っていないのかも判らず時間感覚が狂うのである。
ゆらゆらと揺れる提燈の固形燃料が何れ位燃えたか、其れ位しか判断材料が無いのであった。
イーリンは特段気にしていないのとは裏腹に、対面に座るミーナは頻繁に懐中時計を見ては気も漫ろ。折々に己の顔色を伺っては席を立つものだから、イーリンが流石に気になって口を開こうとした瞬間に亦、忽然と姿を消していた。
[December.23 AM00:00]
「あら、おかえり。調子が悪いのならもう休んでくれても構わないわ――……
なぁに、其れ?」
「何不思議そうにしてるんだよ? 誕生日、じゃないか」
『誕生日おめでとう、私達のイーリン』と書かれたメッセージカードを添えた皿と温かい紅茶を、書類が汚れない様にと配慮した位置で置けば一歩下りメイド然としたロングスカートの裳裾をちょいと掴んで立派なカーテシー。
眉根に皺を寄せて、其の下にある目見には不機嫌と胡乱を滲ませていたイーリンが『忘れていたわ』と肩を竦めれれば、さも当然の様にミーナが『私がお前の誕生日を忘れる訳ないだろう?』だなんて。
「まあ、好意に免じて今回は赦しましょう。
で? 誰が何れを作ったのか当てっこでもすれば良いのかしら?」
「……! 嗚呼。私のは何れだと思う?」
「そうねえ――……」
※SS担当者:しらね葵