イラストSS

●Life with another person is always difficult.
　誰かと共に歩むというのは難しい。
　ふたりが心惹かれ合ってるとして、出生だとか、身分だとか、是迄の事――そんな柵に縛られて、踏み出せない儘に終わる戀が世の中には満ちている。
　相手の人生に関与するには相応の勇気の要る事だ。此の気持ちを一言、たった一言『好き』と告げただけで相手を縛り付けてしまうであろう事が判っていたから、相手とも――そして自分自身すら向き合う畏れていた。
　けれど、何もしないで終わる側になりたくない、とは思った。
　だからこそ、こんな特別な夜に互いを傍に置いたのだし、何方から仕掛けるだとか切欠なんて幾らでも用意されているのだ。
　そうっと近寄った、大きな背中。命を賭して自分を護ってくれる、そんな背中を静かに抱き締める。其れは赦しに他ならず、そして祈りでもあった。
　『厭なら、早く振り解いて欲しいのじゃ』という溢れてしまった想いは、然して愛おし気に重ねられた無骨な掌という解を得た。
　『今なら未だ引き返せるよ』という問いには、指を絡めて返した。
　波に呑まれた『我／あの仔』が海から二度と還っては来なかった様に、もう戻れないのを認めて首元に赤らんだ顔を埋めて――

「おっと、火を弱めようか？」
「いや、もっと薪を焼べて良いのじゃ！　ただ、そう、冬はとっても寒いから。そういうことなのじゃ！」
「……――うん、そうだね。でも折角なら貌を」
「今は！　駄目！！」
「はは、そっかぁ、うん。ボクも寒がりだからさ、もう少しこうして居てくれるかい？」

　※SS担当者：しらね葵