イラストSS

　今日は王子様もお姫様も魔法使いも魔王も、誰だって武器を捨てて笑い合う魔法の夜。
　ガラスの靴は無いけれど、お姫様と魔法使いは居る。そんなシャイネンナハト。
　繋いだ手を離す気は無いけれど、離さなければ帰ることも帰すこともできない。時計の針が12を過ぎても傍に居られたら良いのに、なんて御伽噺じゃあるまいし。
「なぁ、エト」
「……うん、もう少しだけ」
　ぎゅう、と繋いだ指先に力を込めたのはどちらが先か。いいや、どちらからだっていい。離れたくない気持ちは確認せずとも、同じ。
　嗚呼。魔法が解けなければ。魔法の夜が終わらなければ、ずっと一緒にいられるのに。
（……でも、もう帰らなきゃ）
　夜が満ちていく。また明日と手を離して、帰らなくてはいけない。
「エト」
「ウィルくん？」
　コートの奥へと愛しい姫君を招く。やや強引に。力強く抱きしめて、それから。
「今は、お前をちゃんと家に送ることしかできねぇけど、」
「ん……っ」
「……でも、いつかは。未来は……この夜が明けても、一緒にいられるようにしたい。俺は……そう、思ってる」
「なっ……そ、それって、意味ちゃんと……解ってる、の？」
「当たり前だろ。……なぁ、エト。俺さ、お前のこと――――」

　※SS担当者：染