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イラスト詳細

王冠よりも

作者 鹿野慈
人物 アルヴァ=ラドスラフ
カルウェット コーラス
イラスト種別 2人ピンナップクリスマス2022(サイズアップ)
納品日 2022年12月24日

5  

イラストSS

 カルウェット コーラスは、兄のように慕うアルヴァ=ラドスラフを訪ねた。
 木造の古い屋敷──ギルドの一角にあるアルヴァの部屋は、無人のようだった。カルウェットは施錠されたドアをノックしてみるが、反応はない。どこか気落ちした表情になりながらも、カルウェットは部屋の前でアルヴァの帰りを待つ。
 しばらく経った頃、アルヴァがカルウェットの前に姿を見せた。途端にカルウェットの表情は明るさを取り戻す。
「ひっひー、アルヴァ、お帰りなさい」
 そう言って出迎えるカルウェットには、アルヴァが何をしに出掛けていたのか見当がついていた。だからこそ、無事に帰ってきたことに心から安堵していた。
 戦闘の後を匂わせる薄汚れた姿のアルヴァは、微笑みつつもどこか疲れた様子で言った。
「来てたのか、カルウェット」
 部屋のドアを開けようとするアルヴァは、背負っていた麻袋をドサッと床に降ろした。中身が目一杯詰められた袋は、相当な重量があるように見える。
「待たせちまったみたいでごめんな……」
 カルウェットを部屋に招き入れるアルヴァは、残された隻腕、右腕だけで軽々と袋を運び込んだ。その袋から覗いた中身、財宝の数々を見たカルウェットはアルヴァを労う。
「サンタさん、する、してきたの? お疲れ様だぞ」
 富める悪人から盗みを働く義賊として、アルヴァは日々暗躍していた。今日という聖夜の時期でさえも、貧しさに苦しむ子どもたちのために――。
 カルウェットをもてなそうとするアルヴァは、焜炉に火をつけた。焜炉でお湯を沸かすまでの間に、アルヴァは盗んできた財宝――仕入れてきたプレゼントを仕分けようとする。だが、床や家具の上にも乱雑に物が置かれ、散乱しているアルヴァの部屋には置き場所がなかった。
「カルウェット。ちょっといいか?」
 そこでアルヴァは、1番かさばる獲物をひとまずカルウェットに預けることにした。その獲物を掲げるアルヴァを見て、カルウェットはアルヴァのそばに寄っていく。
 1番上等であろう獲物――きらびやかな宝飾の王冠が、カルウェットの頭にかぶせられる。ランプの灯りに反射して、王冠を彩る宝石が美しくきらめいた。
「ボク、王様みたい、ひひ!」
 窓ガラスに映り込んだ自身の姿を見て、カルウェットは無邪気に笑った。カルウェットの笑顔とは裏腹に、アルヴァの微笑には虚しさが見え隠れしていた。

 ※SS担当者:夏雨

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