イラスト詳細
天之空・ミーナの鹿野慈による3人ピンナップクリスマス2022
イラストSS
「そうだ、温泉に行こう」
そう言ったのは誰だったか。誰がそう言ったのかもう覚えていないが、その一言でミーナとレイリー、フルールの三人はある温泉宿へとやって来ていた。シャイネン・ナハトの日は、きっと泊まる人や温泉だけを利用する人が多いだろうと見越し、予め貸切露天風呂のある部屋を予約していたのだ。
シャイネン・ナハト当日、昼間は三人で一通り街並みを楽しみ、部屋で夕食や女子トークを楽しんだ後、三人は今回一番楽しみにしていた温泉へと入る準備をした。
「広いですね!」
「貸切露天風呂と聞いていたから、もっと狭い物だと思っていたが……」
「そうね。でも、これならゆっくり温泉を楽しめそう」
貸切露天風呂のため、三人以外に人はいない。脱衣所で服を脱いで先に足を踏み入れたフルールは、人がいないのを知った上で感嘆の声をあげる。ミーナとレイリーもフルールの後に続くと、二人も「良いじゃないか」と頬を緩ませる。三人とも先に身体を洗い、ゆっくりと温泉に浸かった。
「ふあ~……気持ち良いです……」
「暖かい恰好をしていたつもりだったけど、意外と身体は冷えていたみたいね」
「ああ。じんわりと、暖かいな」
普段、戦う姿からは想像がつかない程、三人は気が抜けた、蕩けた表情を見せている。
ふと、ミーナは隣に並んで入っているレイリーとフルールの二人の胸元に視線が向く。
(……思ったより、でかいな?)
何が、とは言わない。ただ、普段服を着ているため、正確なサイズが分からなかったのだ。ミーナは視線を戻し、口元の辺りまで浸かる。視線に気づいていないのか、仲の良い友人だからか気にしていないのか、二人はそんなミーナの姿に首を傾げた。
「どうしたの?」
「い、いや、肩も結構冷えていたな~……なんて、」
「確かにそうですね。露天風呂ですから……あっ、雪」
ちらほらと、三人のもとに降り注ぐ雪。どうやら、思っている以上に外は冷えていたようだ。
「道理で寒いと……」
「でも、風情があって良いじゃないですか」
「確かにな」
三人で夜空を見上げる。ちゃぷん、という水の音くらいしか響かない。静かで争いもない。
「このままだと逆上せちゃうかもしれないけど、もう少しこのままでいたいな」
「ああ、分かるぞ。でも、流石に倒れたら大変だ。……また、後で一緒に入ろう」
「賛成です! 今日は泊まりですから、明日も朝から入っちゃいましょう」
「そうだな」
三人は雪景色をしっかりと目に焼き付けると、温泉から上がった。
※SS担当者:萩野千鳥