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聖夜の夜泊
聖夜の夜泊
イラストSS
温かな食事に、二人分だけの小さなケーキ。シャンパングラスに注いだマスカットソーダの香りが鼻に抜ける。
窓の外は寒々しい雪景色、その気配を遠ざけるように爆ぜる暖炉の響きだけが室内に響き渡った。
先程まで楽しげに笑い合った声音も遠く。割れるような笑い声と共に弾けたクラッカーは今は静寂に身を寄せていた。
皿の上に置き去りにされたカトラリーはクリームをちょこりと付けて静寂の気配を感じるように息を潜める。
ソファーに腰掛けたルル家の頭がずるりとずれた。こつん、と音を立てて打つかったのはヴァイオレット。柔肌を覗かせたサンタクロースの服は今日という日を存分に楽しんだことを感じさせた。
――ヴィオ、『輝かんばかりのこの夜に!』
――ええ、ルル。素敵な夜にしましょうね。
二人だけのパーティーで語らう言葉も尽きぬまま、心赴くままに食事を手にし微笑み合うその時間が愛おしい。
けれど、穏やかな時間に包み込んだ夢の気配は二人のこころを連れ去って。微睡みの中でも引き続き共に過ごそう。
肩を寄せ合い、花瞼を伏せて。信頼できるあなたの傍だから。穏やかなその時間を愛するように寝息を立てた。
*SS担当:日下部あやめ