イラスト詳細
白薊 小夜の黒猫による2人ピンナップクリスマス2021
白薊 小夜の黒猫による2人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
雪が降る。
しんしん、しんしん。
静かに。静かに。
白い雪が、防音壁のように、雑踏をかき消す。
真っ白な世界、薄いヴェールのそれを透かす、街の明かり。キラキラとした、オレンジ色の光と、白い雪のコントラスト。
触れ合うぬくもり、衣越しに感じる、体温。ぽつ、と白い手に、雪が乗った。瞬く間に溶けていく、水になる。流れていく。涙のように。だとしたら、何の涙だろうか。喜び。哀しみ。驚き。どれだろう、どれだろう。わからないけれど、あなたの手の甲に、白雪は降って、降って、とけていく。
二人を包むように、和傘が開いた。ばぁ、と音を当てて、二人を雑踏から隠すように。雪が隠す。和傘が隠す。雑踏から、ヒトから、世界から、今この時の二人だけを、切り離して見えなくする。
ふ、と――唇が触れ合った。
最初は冷たく、雪の味。
次に暖かく、あなたの味。
触れ合う唇が、衣越しのそれとは違う、直接触れた温かさを教えてくれる。
あなたと、わたし。
わたしと、あなた。
触れあって、溶け合って、あの雪が、水になったみたいにとけて、とけて、一つになったみたいに。
ふ、と離れる。唇が、からだが。ほう、と息を吐くと、真っ白なそれが、二人の間に煙る。
そうして――あなたは笑った。和傘の下、二人だけの、小さな世界で。
*SS担当:洗井落雲