イラストSS

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「あ、ちょっと、動いちゃダメだよ……！」
「わ、わかりました！」
「ふふ、ありがとう。もう少しで出来るからね」
　助けてください、と告げる彼女が、酷く痛々しい姿になっていたから。
　だから、魔法使いは小さな祝福を与えた。
　彼女が少しでも、幸せになれますようにと。

　心を取り戻したルル家を襲うのは、これまでに奪ってきたいくつもの命とその最期だった。
　何度も夢に見るのだ。自分が倒した敵の最期を。理解する度に怖くて。恐ろしくて。

　肌は荒れ、目の下にクマは出来、唇に艶はなく。
（これじゃあ、会いにいけない……）
　想い人とのデートに行きたいけれど、今の自分を見られたくない。それ程までに変わってしまった己の容姿。
　けれど、魔法使いは優しく笑って見せた。
「大丈夫、私に任せて！」

　荒れた肌には蒲公英の綿毛の魔法を。
　酷い隈には瑞々しいオレンジの魔法を。
　艶のない唇には芽吹き出した蕾の魔法を。

「ふぅ……うん、出来たよ！」
「あ、ありがとうございます、アレクシア殿！」

　かくして、花の魔法使いにより化粧（まほう）は施された。
　どうか貴女が、幸せになれますようにと願いを込めて。


　※SS担当者：染