イラストSS

　聖女の奇跡を祝う夜。
　子どもたちの願いを聞き届けるために、忙しく奔走する二つの流星がある。ちらつく雪を突っ切りながら、赤いソリが空に線を描いた。
「あった！　アリマシタ！　ここです！」
　リュカシスが手綱を引き、全体重を預けてブレーキをかけると、ソリは見事に急停止する。ヴァレーリヤは完全に停止するのも待たず、しかし、寝た子を起こさないようにそうっとプレゼントを放り込む。プレゼントは換気のための窓の隙間からころころところがっていって、ソファーのクッションに見事に着地！　……するのを見た二人はガッツポーズを決めた。
「やりました。このエリアはこれで最後ですわ！」
「デス！　ヤッタネ！」
　願い事と、プレゼントの準備に忙しくしていたけれど、最後の仕上げ。……配達するだけというのが意外と大変だった。
　一晩中働き通しなのだけれど、その表情には、ちっとも疲れなど見えなかった。子供達の喜ぶ表情を想像すれば、それは十分な報酬だった。
「ねえリュカシス、次はこの町に行くのはどうかしら？」
「アッ！　ヴァリューシャサン、ボクこの町のこと知ってるよ！　ソリの操縦も任せてください！」
　冬の良く透き通った空気は、星々の瞬きを良く伝えている。瞬きの間に、ぴゅんと影はいなくなる。


　※SS担当者：布川