イラスト詳細
幸に染まる聖夜
作者 | 碧 |
---|---|
人物 | ウィリアム・M・アステリズム エト・アステリズム アイラ・ディアグレイス ラピス・ディアグレイス |
イラスト種別 | 4人ピンナップクリスマス2021(サイズアップ) |
登録されているアルバム | |
納品日 | 2021年12月24日 |
イラストSS
●輝かんばかりのその夜に
聖夜本番ともなれば街にはカップルが居たとて何ら不思議ではない。そしてそのカップルが知り合いだったとしても、それもまた不思議ではないのだ。
「ウィリアムくん、こちらのケーキは……」
夜の色をした髪が翻った。不思議そうに瞬いたコルクは、またしても不思議そうに、隣を歩く青年――ウィリアムを見上げる。ウィリアムは甘く微笑んだ。予約しておいたのだというケーキは幻想でも人気の店のもの。名前を言えばすぐに渡されたケーキ。そこまで根回しをしてくれていたのかと、ただ只管に驚いたのを覚えている。
「コルクと二人で食べるケーキだよ。特別な夜だからな」
「……私、本当に何も用意していませんのよ」
「構わないさ。贈り物なんざなくたって……その。お前と居る方が楽しいってことだけは……確かだし」
「……っ!」
「お、おい、照れるなよ……」
「貴方が悪いんですからね……もう! 先に帰ります!」
「ちょ、おい、コルク! 待てよ、なぁ――」
酷く不器用な。見ている方が恥ずかしい、初心な彼等。人混みを走り抜けようとするコルクを追いかけていくウィリアム。の、その横を、彼の弟子――アイラが楽しげに通り過ぎた。
「ラピス、ラピス!」
はやくはやく、と。少しずつ藍に染まる空を見ては、わくわくとした様子を隠しきれずにいるのだろう。そんな彼女――否、妻がこの世の何よりも愛おしい。ラピスは笑みを浮かべて頷いた。
「早く帰ってシチューを作りましょう!」
領主たるディアグレイス夫婦は、アイラが連れ帰ってきた孤児達の面倒を見ることを重視、注力していた。
「とびきり美味しいシチューにしようね、アイラ」
ただ、彼女には味覚がない。希薄な味覚では料理だって一苦労だと解っているから、ラピスが居る。彼が居れば彼女の足りないを補うことができる。だからこそ、今日だって一緒に買い物に来たのだ。
(それに、アイラは可愛いから、一人で行かせるなんてできないしね)
無垢な笑みを己に向けるアイラ。微笑ましい恋人のように見えるかもしれないが――夫婦なのだ。周りに見せつけるように、ラピスは腰を引き寄せた。
「わ?!」
「ふふ。アイラは迷子になりやすいから、こうすればはぐれないでしょ?」
「えへへ、うん。きっとそうです!」
輝かんばかりのこの夜に。
煌めく街並みが照らし出す四人四色のその笑顔は、きっとどのネオンよりも明るいのだ。
※:SS担当者:染