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クレマァダ=コン=モスカのおしかつによる2人ピンナップクリスマス2021
クレマァダ=コン=モスカのおしかつによる2人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
がっちりと握り込んでいる割に、ふるふる震える包丁の持ち方。青年らしい手が、綺麗なほそい手の上からそうっと教え込むように添えられる。
「包丁はもっと柔らかく握った方がいいですよ。ほら、こう――」
「わわわかっておるわい! お主が後ろから握るから緊張するのじゃろうが!」
クレマァダがぎゃんっと叫ぶと、ぱっとフェルディンは彼女から手を離す。
「あはは、そ、そうですよね。すみません」
少しばかり困ったように笑って詫びる青年に、少女はぷくっと頬を膨らませつつも。
「……して、大きさはこの位でよいのかの?」
おっかなびっくり切られていくじゃがいもと、クレマァダの手つきを見守りながらフェルディンが答える。
「はい、そのままゆっくりで大丈夫」
やわらかな眼差しの奥、秘めた想いは言葉にはしない。それは青年とて同じで、決定的な何かが変わってしまいそうだったから。きみのためならば、きっと変わってもいいとさえ思っているけれど。
彼を想うがゆえに変えてはならないこの距離を、少女はかたく誓う。与える者である自分が、青年の人生を、大事なものを、願いを奪ってはいけない。
「人参はボクが。二人で作るんだから、きっと美味しいシチューになりますよ」
「ふ、ふん。当然じゃ」
聖夜の幸福は、このくらいささやかでいい。
※SS担当者:遅咲