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恋屍・愛無のなかのただひとによる2人ピンナップクリスマス2021
恋屍・愛無のなかのただひとによる2人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
燈堂家の中庭には景色を一望出来る場所に茶屋がある。
その縁側で暁月と仁巳は降ってきた雪を眺めていた。
「雪久々ですね……」
「そうだね。天候は管理されてるから、こうして降るのは珍しい」
「やっぱりシステムが壊れているのでしょうか」
マザーの不調は希望ヶ浜にも及び、人々の暮らしは僅かに不便になったのかもしれない。
感受性の高い年頃である仁巳は何かと不安になることも少なくないだろう。
そんな時、優しく声をかけてやるのが『親』としての責任でもある。
「大丈夫。この国の技術は凄いからね。そのうち元通りになるさ。だから、心配いらないよ」
「ふふ、暁月さんがそう言うなら大丈夫ですね。安心しました」
微笑んだ少女の端々に初々しい恋心が見え隠れする。
大人である暁月はそれに気付いているけれど、門下生は何れ巣立っていく『子供』達だ。
彼女らの『親』である自分がその気持ちに応えることは出来ない。
何れ仁巳も成長し、その恋が実らぬ事を知るだろう。
その時に嫌われてしまったとしても、純粋な眼差しを向けてくる少女の恋心を壊したくは無い。
必ず道を違えるのなら、この時だけは、ただ優しいだけの時間であれと願ってしまうのだ。
*SS担当:もみじ
挿絵情報
- SS『暁月の好きな物』