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リア・クォーツの波留川による3人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
●密やかなる光の夜に捧ぐ
数多の幸福を言祝ぐ祈りもしめやかに終えたのにも関わらず、祈りを先導した者は決して報われず倒れる――出来の悪い最悪な結末。
思いの外にこの身体は儘ならず、聖夜のミサを終えてクォーツ修道院の修道女リアは体調を崩し自室に伏せっていた。
「リーアッ!」
――されどそこに響いてくるのは、様々な感傷を置き去りにしてくれるような、心優しい親友――シキの声。
椅子を己のいるベッドに寄せて、無邪気に笑い詰めてくれる距離に臥せりかけていた心が立ち上がるようで。
「こういう時こそ美味いもの食って楽しむもんだろ?」
続きやってきた兄貴分――サンディの掲げる手に握られたバスケットの中の、香ばしい匂いを放つ鶏もも肉と彼の笑顔に絆されるのもまた無理からぬことで。
――三人だけの、密やかなシャイネンナハトのパーティはここに始まった。
「ああ、ほら……仕方のない子ね」
「むぐっ……」
見ているだけでも自然と食欲の湧き上がるような、シキの食べっぷりに感心もしながら、口元を汚す食べカスをハンカチでリアは拭っていた。
「はい。綺麗になったわよ」
「ありがとぉ」
まるで尻尾を振る子犬のように、口元を拭われながら甘え成すがままにされていき。
かくて再び鶏肉を齧り出したシキを後目に、リアはシキと同じく椅子をベッドの傍につけて座るサンディと目が合った。
「……」
「……ふふっ」
言葉は交わさずともに分かる――兄貴分の温かな視線が。何気ない密やかな聖夜のパーティを祝い見守ってくれる、優しい眼差しに不意に笑みを零して。
極まりそうな感に胸をぐっと抑えると、リアは口元に微笑みを浮かべたまま二人へと言葉を投げかけた。
「二人とも」
発せられたリアからの声に、シキとサンディはそれぞれがリアの方へと目を向けた。
――何だろうか。
言いたいことは沢山ある。ミサを手伝ってくれてありがとう。体調を崩したりなんかしてごめんなさい。パーティを開いてくれてありがとう、嬉しい。
言うべきこと、言いたいこと、それはとても様々にあるのだけれど――だけれども、何よりも言うべき一つの科白に。
「ハッピーシャイネンナハト」
「ハッピーシャイネンナハト!」
「ハッピーシャイネンナハト、だな」
――その言葉だけでいい。その言葉だけで、言うべきこと、言いたいことへの答えは十二分に伝わったような気がした。
クォーツ修道院の中の一室にて、密やかな、しかし何よりも幸せで賑やかなパーティの時は優しく過ぎて往く。
どうか、素晴らしき三人の友情に幸あらんことを――。
※SS担当者:表川プワゾン