イラスト詳細
アーリア・スピリッツの冬在による3人ピンナップクリスマス2020(横)
イラストSS
海洋の聖夜を過ごしはしゃぎすぎたのか。
帰って早々の急な『掃除』の仕事に廻は熱を出して寝込んでいた。
「あらあら。廻くんは熱を出してるの? 大変ねぇ」
「ああ、折角来て貰ったのにすまないね。君に渡したいものがあったんだけど」
廻と一緒に選んだ桃香酒が入った包みを暁月はアーリアに手渡す。
「これは私と廻からのシャイネンナハトのプレゼントだ。受け取ってくれたまえ」
「まぁ。ありがとう。嬉しいわぁ! 私も廻くんにプレゼントを持ってきたのよ。暁月さんも廻くんにあるんでしょう?」
まだまだ、自分達には子供の廻が、朝起きた時に喜ぶ顔を想像しながら二人は彼の枕元にプレゼントを置いた。眉を寄せて苦しげな表情が少しでも和らぐようにと願いを込めて。
「ねえ。廻くんはいつもこんなに苦しんでいるの?」
事情に深く踏み込むつもりも無い。けれど、弟分のような廻が苦しんでいる姿も見たくないとアーリアは思うのだろう。
「ふふ、君は優しいね。そうだな、掃除屋の仕事は廻が望んだ事なんだよ。私の役に立ちたいと。
私は廻が一人で生きて行けるようになれば手放すつもりで居た。瀕死の重傷を負わせた責任として」
「ちょっと待って重傷を負わせたって……?」
夜妖に憑かれ掛けた廻を斬り重傷を負わせた。大本の獏は二つに分かれ、善の『あまね』が残った。
廻の命を繋ぐ為には彼の記憶全てと、莫大な生命力が必要だったのだ。
「獏の性質が強くて一ヶ月は太陽の光を浴びる事さえ出来なくてね。ただ生かされている自分が役に立つ方法を探したのだろう。けれど、掃除屋としての類い希なる才能を行使するには、更に私へ生存代償を求める結果になってしまった。皮肉なものだ。廻ってしまうんだよ。どうしてもね」
暁月が暁月で在る限り。廻が廻で在る限り。抜け出せない廻廊に囚われるのだと暁月は紡ぐ。
「ぅ……」
襖の向こうから音がして廻が姿を現す。けれど、虚ろな瞳は揺蕩い足下も覚束無い。
フラフラとアーリアの前に歩いて来てゆっくりと赤い唇に手を伸ばした。混濁した意識は生存本能に従って甘美な生命力を欲した。しかし、触れる寸前で暁月の手が廻を抱き寄せる。
「ダメだよ。彼女は君が大切にしている人だ。後で沢山あげるから、もう少し我慢しなさい」
虚ろな瞳が焦点を結ぶ。目の前に誰がいたのかを知覚して廻の目が驚愕に見開かれた。
「ぁ……アーリアさん。僕……、ごめんなさい」
「大丈夫よぉ。疲れているのね。ゆっくり休んだ方がいいわぁ」
いい子と廻の頭を撫でて。アーリアは「じゃあね」と去って行く。
願わくば、明日の朝は子供の彼が嬉しい気持ちで居られますように。
桃香酒
桃を日本酒に漬け込んだお酒。甘くて美味しい。けれど、度数も高め。甘くて危険な貴女のよう。暁月と廻からアーリアへのシャイネンナハトのプレゼント。
※担当GM『もみじ』