イラストSS

　硝子の向こうの景色が、普段より華やかさを増す昼下がり。行きかう人は忙しなく、みんなどこか浮足立っている。
　風景を枠で切り取ったその向こう側から見る光景は、さながら人生の一場面を切り取った写実画。

　窓の向こうには、女の子が二人。先を行く銀髪の少女――アリアは両腕に荷を抱え、弾むように街を行く。
　その後方をついていくのは、悪魔のような翼と尻尾が特徴的なマルベート。こちらは大きな紙袋を二つ提げ、心持ち疲れた様相で面前の元気の塊を見つめている。
「ほーら、マルベートちゃん早く早く！」
「ちょ、待ってアリア……」
　手を引けない代わりに声が急かす。急かされた方は肩で息をしながら、重い荷物を抱え直して道を行く。
　
　窓の枠から二人が消える。彼女たちはこれからどこに向かうだろう。
　愛する人、無二の親友、或いは一人の夜を堪能するのかもしれない。けれど、そのための準備は本番と同じくらい、もしかしたら本番以上の楽しみが待っている。
　その時、あの二人はどんな笑顔を浮かべるのだろうか。どんな言葉を交わすのだろうか。
　
　ああ、いずれにしても。
　輝かんばかりのこの夜に、二人の笑顔が絶えないことを。


　＊SS担当者：澪NM