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聖夜のお買い物
聖夜のお買い物
イラストSS
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ひらひらと鼻先に白いものが止まる。白い息を受けてはかなく姿を消した。
「ヴァレーリヤさん、頭雪つもってるっスよ」
「あら――」
見上げれば、重く立ち込めた銀色の雲から白い泡が立ち上るように雪が降ってくる。
両腕に抱えた紙袋からはカナッペ用のパンがつきだしているを立てる。イルミナの方はワインにウィスキーとスナック菓子の袋が入っているので冷えそうだ。
あれだろうか。往来で飲みだすかと心配されたのだろうか。いや? さすがに? 往来で封を切ってラッパ飲みはしない。なぜならコルク抜きを持っていない。指でつまんで開けられるだろうとか言わないでほしい。
「どうりで冷えると思いました」
紙袋を抱え直す。首元の十字架がちょっと曲がってしまったが、慈悲深き主は至らぬ子羊を許してくれるだろう。
「それでは、全速力で戻りましょう! せっかくの御馳走が雪でふやけてしまう前に!」
満面の笑みを浮かべるとイルミナはパシャリと瞬きをして笑った。吸い込まれそうなカメラアイの上のまつ毛が溶けた雪できらきらしている。
「了解っス」
「雪国生まれの全力移動のお手本をお見せしましてよ!」
*SS担当者:田奈アガサGM