イラストSS

　夜の帳が下りた頃。
　普段は小奇麗にしているエルスの部屋の、床にもテーブルにも物が散らばっていた。保湿液、美容液、シュシュ、ファッション雑誌、化粧品に化粧ポーチ。もちろん部屋の主であるエルスのものだ。
　そして下着姿のアイラに対してエルスは、あれがいいかしら、これもいわね、なんて言いながらおめかしをしている。
　アイラが下着姿なのは、お風呂から上がったアイラがパジャマを着ようとしたタイミングで、エルスに強引に部屋まで連れ込まれたからだ。
　戸惑うアイラをそのままに、髪を結い、軽くお化粧をした。
「よし、これでどうかしら」
「……わあ」
　手鏡を渡せば、アイラの驚き交じりの笑顔が弾ける。
　自分でおめかしする時とはまた違った可愛らしさ。
　浮かぶのは、愛したあの人の顔。
「……可愛い、って」
「言ってくれるわ。とびきり可愛いもの」
　エルスの瞳をじっと見て紡がれた小さな声に、エルスは穏やかな笑みを返した。
　好きな人の隣に並んでいるアイラへ、憧憬を抱いているエルス。とびきり可愛い彼女へ、どんな服を着せて、どんなアクセサリーを合わせようか、なんて考えてみたりして。
　夜はまだまだ続く。恋する乙女たちの夜だ。


　＊SS担当者：春風NM