PandoraPartyProject

イラスト詳細

何も考えず、只々

作者 naporitan
人物 カタラァナ=コン=モスカ
エマ
イーリン・ジョーンズ
イラスト種別 3人ピンナップクリスマス2018(サイズアップ)
登録されているアルバム
納品日 2019年01月07日

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イラストSS

 本がうずたかく積まれている。
 隣には大量の付箋がついた紙束が、塔のように積もっていた。
 五枚の黒板が水車のように連なった回転ボードには様々な図式や文字、地図らしき俯瞰図や記号、数式めいたものが一見乱雑に、しかしよくみれば几帳面なほど緻密に書かれていた。
 ここは知識の壺。
 ある旅人の集めた知識が詰まった部屋。
 たき火のぱちぱちという静かな音に、鈴を転がしたような美しい歌声が乗っていく。
 どうやらシャイネンナハトを祝う歌のようだが、そこかしこに楽しげなアレンジが加わっていた。
 カタラァナ=コン=モスカ。どこか艶めく独特の衣装は、今日ばかりはオフだ。暖かそうなコートやマフラーに身を包み頭には三角帽子。ゴブレットの中身と一緒に左右へリズミカルに揺れていた。
「カタラァナの歌を聴いてると、季節が変わった気分になるわね」
 傍らにゴーグルを置き、ブランケットを背に背に被って座る女。イーリン。通称司書。
 彼女は瓶を手にとって、少し前のことを思い返すような目をしていた。
「えひひ……くりすます? シャイネンナハト? っていうのはいいですねえ。美味しいものが沢山食べられて……」
 カタラァナが持ち込んだらしいターキーレッグを両手に持って、左右交互にもふもふと食べているのは、エマである。
 この場所に限らず、街角で頻繁にでくわす三人である。
 そんな彼女たちが賑やかな街角を離れて、こうして静かな書庫(?)に集まるのは、どこか不思議な偶然と、ちょっぴり胸の躍る連帯感があった。
「司書さんも食べればいいのに。こんな日でも干し肉なんです?」
「ライ麦のパンで挟んでるじゃないの」
「干し肉と干し肉サンドの違いなんで小麦数本分だけですよぅ。ほら、美味しいですよ何かのお肉」
「ターキーだよ?」
「ターキーのお肉ですよ」
「あなたターキーが何か分かってるの?」
 などと言いながら振り返って、イーリンは目を丸くした。
 口元を押さえ、笑いをこらえるように膝に顔を埋める。
「なにか顔についてます?」
 首を傾げるエマの頬に、お肉の破片がぺったりついていた。
「その台詞を言って本当についてる人って、いるのね」
「へわっ!?」
 慌てて顔をぺたぺたやるエマ。
 カタラァナはゴブレットの中でしゅわしゅわいっているシャンメリーに口をつけると、再び別の歌をうたいはじめた。
 特別なことなんでない。
 いつもとちょっと違うごちそうが並んでいて、ちょっと違う歌が聞こえるだけの日。
 けれどそれが、何よりも代えがたく、尊く暖かいものなのだと……知っていた。

 ※担当GM『黒筆墨汁』

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