イラストSS

「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
　乙女たちに開かれる門、メタリカ女学園。
　ここでは今日も乙女心をもつ乙女たちが頂点を極めるべく集っていた。
　だがそんな中に、見慣れる転校生の姿が。
「ごきげんよう、葵子さま。可愛らしいマフラーですわね」
「手袋もよくお似合いですわ」
「歯車の髪飾りが素敵ですわ」
　乙女たちに声をかけられ、しかし葵子は寂しげな笑顔を返すばかり。
　なぜかしら。容姿を褒められれば乙女なら誰しもお喜びになるはずなのに。
「ごきげんよう……葵子」
　吹きすさぶ、風。
　灰色の空はまばらに粉の雪を降らせはじめる。
「……悠子さま」
　葵子は目を細め、悠子は振り返る。
　長い長い氷山色の髪が、大きく風に靡いて広がった。
「――」
　呼吸を止めて一秒。
　接近までコンマ一秒。
　繰り出した掌底をのけぞって交わし、葵子は鋭い足払いをかけた。
　まるで浮遊するかのような跳躍。悠子の拳が、スコールの雨粒のごとく葵子を襲う！　対する葵子の拳が対空射撃の如く！
　乱打！　乱打！　砕けるタイル！　はじけ飛ぶ雪！　舞い散る花弁！
　交わされる拳。寒空に散る血しぶき。
　暴風を纏って迫る二人は５０センチの距離にて――。
「メリー、クリスマス！！」
　急速に制止し、小さなプレゼントボックスを差し出しあった。
　そうここは乙女の花園、メタリカ女学園。
　戦い、笑い、清楚に立て！
　乙女よ永遠に、乙女たれ！

　※担当GM『黒筆墨汁』