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劇場亭『レゾンデートル』

異聞:熱砂の恋心 雪花編

3周年記念SSのような何か。
(非公式です。解釈違い等多々あるかもしれませんが、『そういうもの』ということで。
『そういうもの』が許容できない方は、このまま戻ることをお勧めします)

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「これからどうするつもりですか?」
「……ん?ああ。すぐに戻る。商人ギルドの連中と話をする必要があるからな」
 めんどくせぇけどな、とディルクが付け足す。
「そうですか」
 慣れたもので――何せ彼の先々代から続くのだから当たり前だが――素っ気なく返事をするリュミエだが、その淡白さは彼の手腕と力量を正確に見定めた上で置く信頼の裏返しとも言えるのだろう。
 それではここで、と言い大樹ファルカウへと戻っていく巫女の背中を見届けてから、ディルクは留めておいた馬に飛び乗り、帰路へとついた。
 相変わらず空はどんよりと重く、砂漠を抜ける風も湿気を含んで普段より重く不愉快だ。さっさと戻ろうと馬を走らせる赤犬の面前に、
「……ほう?」
 まるで天からの使いの如く舞い降りる、一片の純白。それは時を追うごとに数を増し、砂漠に一瞬白い閃光を瞬かせ、すぐに大地へと解けていく。さっきまでいた場所とはまるで違う景色。
「なるほど、『夢みてえ』だな確かに」
 雲の切れ間から漏れる一条の光に照らされたその空は、嘘のような現実を淡く照らしている。冷えこんだ砂漠も、こんな景色が見られるのならば上々だ。
 ふと、赤犬の脳裏にある女の姿が目に浮かぶ。自分を慕うあいつは確か、寒さを好まなかった筈だ。この光景を、この天気をどう受け止めているのか。
「後で聞いてみっか」
 そう一人呟く彼の表情はいつもの彼らしいそれで。
 そうと決まれば早速塒に帰らねば。いつの間にか止めていた馬の手綱を引き、再び帰路へつく彼の後ろ。
 
 一輪のホワイト・カーネーション。その隣にはあの場所にあったものと同じイエロー・カーネーション。
 砂漠に咲くはずのないそれらが肩を並べるようにして花を咲かせていた。
 まるで談笑する仲睦まじい姉妹のように。
 

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