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劇場亭『レゾンデートル』
「ま、それはそれとして、だ。案内は……アンタ直々に頼めるってことでいいのか?」
「ええ、勿論。それでは参りましょうか」
さく、さく。口当たりの良い焼き菓子が口の中でほどけるような音を立てつつ、一組の男女が慣れた足取りで迷宮森林を進んでいく。仇なす者には出ることも入ることも許さぬ迷宮森林ではあるが、その国の巫女と友人たる彼を阻むことなどあろうはずもなく。
やがて二人が辿り着いたのは、迷宮森林の一角。奥深くで――他に訪れる者のない、とても寂しい、だがそれ故にとても静謐な一角だった。
その一画は完全に手が加えられており、地面は黄色いカーネーションで埋め尽くされている。朽ちた巨木が、更に長い時間をかけて作り上げた空間は、虫食いの穴が採光窓の役割を担い、細い筋が星のように中を照らす。
どうしても薄暗さは否めないその空間に、『それ』はあった。
「あれか」
「ええ」
そんな短いやり取り。それだけで互いの意思は十分に伝わる。
『カノン・フル・フォーレ』。ファルカウの指導者、リュミエ・フル・フォーレの妹。同時に様々な不幸とすれ違いの果てに魔種へとなり果て、ディルクに――否、『エッフェンベルグ』に討たれた存在。
その彼女の墓が、森の息遣いさえ聞こえてきそうな奥部に在る。
「なんだってこんな辺鄙なとこに?」
赤犬の問いかけに、だがリュミエは一瞬答えに窮した。
ここはカノンと彼――クラウスが初めて出会った場所、そう言おうと思って、リュミエの喉はその言葉を紡げなかった。
「……妹は、この場所がお気に入りでした」
代わりに放った言葉に、背後で「ふーん」という返事が響く。先祖に似てしまったのか妙に勘の鋭い男だ、きっと何かを言ってくるかと思ったが意外にも次の言葉はない。
「ええ、勿論。それでは参りましょうか」
さく、さく。口当たりの良い焼き菓子が口の中でほどけるような音を立てつつ、一組の男女が慣れた足取りで迷宮森林を進んでいく。仇なす者には出ることも入ることも許さぬ迷宮森林ではあるが、その国の巫女と友人たる彼を阻むことなどあろうはずもなく。
やがて二人が辿り着いたのは、迷宮森林の一角。奥深くで――他に訪れる者のない、とても寂しい、だがそれ故にとても静謐な一角だった。
その一画は完全に手が加えられており、地面は黄色いカーネーションで埋め尽くされている。朽ちた巨木が、更に長い時間をかけて作り上げた空間は、虫食いの穴が採光窓の役割を担い、細い筋が星のように中を照らす。
どうしても薄暗さは否めないその空間に、『それ』はあった。
「あれか」
「ええ」
そんな短いやり取り。それだけで互いの意思は十分に伝わる。
『カノン・フル・フォーレ』。ファルカウの指導者、リュミエ・フル・フォーレの妹。同時に様々な不幸とすれ違いの果てに魔種へとなり果て、ディルクに――否、『エッフェンベルグ』に討たれた存在。
その彼女の墓が、森の息遣いさえ聞こえてきそうな奥部に在る。
「なんだってこんな辺鄙なとこに?」
赤犬の問いかけに、だがリュミエは一瞬答えに窮した。
ここはカノンと彼――クラウスが初めて出会った場所、そう言おうと思って、リュミエの喉はその言葉を紡げなかった。
「……妹は、この場所がお気に入りでした」
代わりに放った言葉に、背後で「ふーん」という返事が響く。先祖に似てしまったのか妙に勘の鋭い男だ、きっと何かを言ってくるかと思ったが意外にも次の言葉はない。
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(非公式です。解釈違い等多々あるかもしれませんが、『そういうもの』ということで。
『そういうもの』が許容できない方は、このまま戻ることをお勧めします)