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鉄帝喫茶「ビスマルク」
ーー基礎。そう、彼女は云った。
然らば、私の基礎。戦い方のはじまりは何処からだろうか。
そう逡巡して、僅か。辿り着いた答えは一つ在った。
ーー最早過日の記憶にしかない、父の拳。
鍛錬と経験を積み上げた、回避を許さぬ連打と決死の反撃とを融和させたモノ。
幾度となくあの闘技場(ラド・バウ)で見たその構えは、朧気ながらも頭に残っている。
ーーけれど、それまでだ。どれもこれも、再現すらも出来ていない。不完全という言葉さえ余りある。
だからこそ、”眼前の彼女に負ける程度”でしかないのかとーー不甲斐なく思う。
自分はまだまだこれからだ、だなんて。そんなものは言い訳にしかならないんだと。
そこまで考えて、言葉が自然と滑り落ちる。
「ーーああ。本気、だな。なら、やらなくてはならないな」
身に染みた技も一度頭から投げ捨てて、構えを取ろうとする。
そうしてみて、痛感する。
果たして真っ当に足が着いているのか。その手には確りと力が籠っているのか。
何時もなら、分からなかった筈だ。
けれど今はーーほんの少しだけ、分かる。
正式な技を修めた彼女からすればどう見えたのだろう。そう思って仕方がない。
そうして息を吸って吐いて、一拍。ーーその直後。微かに見えた光は、揺らいだ。
故に、悟る。
「”何か”を得るにはーーこの一撃しか無いのだと」。
ーー思い出せ。或いはこの瞬間にでも積み上げろ。本気で、やってやれ。
然らば、私の基礎。戦い方のはじまりは何処からだろうか。
そう逡巡して、僅か。辿り着いた答えは一つ在った。
ーー最早過日の記憶にしかない、父の拳。
鍛錬と経験を積み上げた、回避を許さぬ連打と決死の反撃とを融和させたモノ。
幾度となくあの闘技場(ラド・バウ)で見たその構えは、朧気ながらも頭に残っている。
ーーけれど、それまでだ。どれもこれも、再現すらも出来ていない。不完全という言葉さえ余りある。
だからこそ、”眼前の彼女に負ける程度”でしかないのかとーー不甲斐なく思う。
自分はまだまだこれからだ、だなんて。そんなものは言い訳にしかならないんだと。
そこまで考えて、言葉が自然と滑り落ちる。
「ーーああ。本気、だな。なら、やらなくてはならないな」
身に染みた技も一度頭から投げ捨てて、構えを取ろうとする。
そうしてみて、痛感する。
果たして真っ当に足が着いているのか。その手には確りと力が籠っているのか。
何時もなら、分からなかった筈だ。
けれど今はーーほんの少しだけ、分かる。
正式な技を修めた彼女からすればどう見えたのだろう。そう思って仕方がない。
そうして息を吸って吐いて、一拍。ーーその直後。微かに見えた光は、揺らいだ。
故に、悟る。
「”何か”を得るにはーーこの一撃しか無いのだと」。
ーー思い出せ。或いはこの瞬間にでも積み上げろ。本気で、やってやれ。
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進むままに進め。
退路がなくなって初めて、見えてくる道もあるのだろう。
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都合何度目かはわからない。
しかしこうして何度目であろうと、十七夜は地面に転がされた。
接点が背中の中心に来た瞬間、そこを軸にぐっと背中を張り出す。投げられた勢いを上に転換して、美しく足を垂直に持ち上げながら、一瞬で十七夜は立ち上がった。
木剣は月明りを照り返さない。
鈍く照らされた光を柔らかく包んで、刀身に僅かに湛えている。
ややあって後ろを振り向いた女は、果たして少女よりも小柄だ。
両腕はまるでぶら下がっているようで、自重で扱えているのかも定かではないが、それが成した成果は自分が良く知っているのだ、と十七夜は密かに臍を噛む。
とん、と両の踵を女は揃えた。
そのまま鋼鉄の両腕を腰の後ろで静かに揃える。
きぃ、と鉄の軋む音が鳴った。
「やはり、己の流儀を持っていないのが良くないでありますな」
侮蔑ではない。
求めているものを求め切れていないその不幸に、女は嘆息した。
必殺の一撃――それを持っている彼女にその願いをされた時から、そんな気はしていたのだ。
錬鉄徹甲拳。
その武術を学ぶとなれば、一朝一夕ではならぬが。
少なくとも仲間がそこに己の鬱積の突破口を求めているのであれば、応えるのは吝かではないそう思って、女は少女の願いに応えた。
ないのだが……
「こないだの地下闘技場ではもっと動き良かったでありますよなあ。
……であれば、自分、思うでありますよ。
必殺の一撃あらば、そう、まずは防御と牽制であると。
我流結構。しかし単なる無手勝流を我流と称すには、この業界なかなか厳しいでありますよ?」
けほけほと、先程打ち付けた背中を気にしながら十七夜は、勝手なことを言ってくれる……と思った。
こちらは剣。相手は拳。であれば……いや、それこそが驕りか。
少なくとも、木剣で遠慮なく殴りつけたからといって恨むような人では。
いやむしろ、木剣を言い訳に手加減をしたら烈火のように怒り狂いそうな人だと思った。
「貴女。貴女の動きには、何かの基礎を感じるであります。
絞り出すであります。次は、後の先に拘らず己から状況を作っていくのであります。
大丈夫、貴女のその必殺の技は本物だ。貴女の技――技を超えた本質は、きっとある。
それを一緒に見つけるでありますよ。
然らば――次こそ本気の一合だ」
そう言うと、今までざっくばらんに構えていた女の手が変わった。
左手は軽く上げ、人差し指の先が女――エッダ・フロールリジの視線と、十七夜の心臓を真っすぐに繋いでいる。
右手は内側に捻り、顎の横に添えられている。
次とか何とか言っているが、ぴりぴり肌に伝わる感触は十七夜に一つの事実を告げていた。
全力でやるからな、と。
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●参加者向けハンドアウト
・あなたは自分の技を磨き上げる為、先輩オールドワンに指導を乞いました。
・彼女はあなたの武に光るものを認めながらも、技術基盤の弱さを気にしているようです。
・彼女は稽古のつもりですが、そもそもいつであれ本気です。
・次の一撃は、あなたの刀を左手の甲で滑らせて受けながら、右拳が心臓に向けて放たれる形で飛来します。