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unknown

石の男

此処には石が在った。
此処には意思が在った。
此処には意志が在った。
佇む男の毛一本。
先から先まで生命の如く。
恐怖の最中で固まった。
芸術家曰く。
――此処に在る『男』こそが『芸術』に最も近い。

※※※

机に置かれた液体を飲みます。
自身が『石』と成り始めます。
己を蝕む恐怖の『RP』を演りましょう。

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 紙片が置いて在る。

  我が友の制作した薬。旅人たる己を弄り、他物語からの贈物を成した。勿論、我自身の贈物とは違う『理』だが。効果の程は凄まじいだろう。されど薬は『劣化版』と解く。故に石化の時間は短い筈だ。躊躇無く呷り給え。我は部屋の外で『貴様等』の彫像――芸術性豊かな――を観察する。素晴らしい反応に期待すべき。
  紙片の隣に袋と瓶。中身は水と同外見で在るが、異様な心地を蔓延させる。蔓延した雰囲気は周囲を硬直させるが如く、強烈な衝動を齎した。飲みたい。呑みたい。固まりたい。酷く歪な『生』たる自身を『永久保存』したい――貴方か。貴女は魅力的かつ抗い難い衝動に陥り、薬を用いて――緩やかに。確実に。石化を受け入れるだろう。観よ。世界は神で満ちて在る。世界は未発展の恐怖で満ちて在る。寄越せ。皆の芸術性を寄越せ。総ては『神』を造る為に!
 強烈な感情が観たいト言ったな。いいだろう、私の神をみせてやる。
 私の種族、Ousyeの祖はExisより来たり。女人のみの脆弱にて臆病なる祖が、白いカンバスを、赤い憤怒で塗りつぶしオウシェと成った。
 臆病な心! 生じた恐怖! すべて憤怒で塗りつぶした! 怒りこそがOusyeの根源! 恐怖を怒りで誤魔化すが如く、恐れながらに怒りで首をねじ切り、臆病風に震えながら有象無象を千切り飛ばして、屍山血河を築いて征く!
 憤怒の歴史だ! 憤怒の種族だ! 恐怖と戦い続けてきた憤怒そのもの!
 アアアAAahh! 石となる!身が、肉が石像と化す。怒りだ、怒りが足りない! 恐怖を憤怒で塗り潰してこそ我らであるのに!
 負けるのか!? 怒りの精髄たる我らが、恐怖に負けるというのかアア!!
 (歯を食いしばって憤怒と恐怖の入り交じる形相で石化)

ってな感じで。割とシンプルに『憤怒vs恐怖』か。我ながらマジキチだな。うむ。
「素敵な憤怒と恐怖。神の容に感謝を。されど。貴様の言葉は少々障る。触れる事は逸脱に至らず、必ず『人間』で留まるのだ。無辜の混沌が齎す、全平等の如く。我等は我等の視点で変化する。魔王が雑魚に。正気が狂気に。世界とは個と他で成り果てる」

 薬物の追加。

「兎角。有難い。応えた輩に拍手を」
くふふふふふ……これだ。これ。
いつかはやろうと思っていた。試す。試したい。試さねば!

(紙片を読む。そして、薬を呷る。迷いなどなかった。即決だった。)
ん、ぐ……。んん、味は……求めるものではないか。
そして、肝心要の石化………………あ。
あああッ、来たッ。来たぞッ。そうか、これが、そうなのか。
はあぁ……石に。石になってしまうのか。神に捧げたこの身が。神の法、神の秩序の為に、仕え、奉った、この肉体が…ッ。
は、ひ…くひ、くひひひッ……!固まる。囚われる。縛られる。堪らない。堪らんぞ。なんて、魅惑、の………………

あ。
あ。駄目だ。待て。
仮面。……仮面が。これでは、顔……表情……感情……が。
(声が。指が震える。
沈黙。そして、意を決してぎこちなく動き出す。のろのろと腕を上げ、仮面に手を)
駄目だ。そんな。動かない。ああ、手が、石のように。違う。石そのものだ。駄目だ。これでは………
あ。終わる。終わって
(石化)
(暇なのでいろんな所を回っていたところで気になった扉を開ける。薬と紙が置いてある。しかし、彼女は文字が読めない。崩れないバベルで翻訳してあるとしても読めない。彼女は自分の世界の文字ですら読めない。けれど、それが薬だとはわかった。人の形の石。石になる薬。彼女は期待した。『生』を『永久保存』…それは彼女には『死』だと。その薬の効果が短時間だとは知らず。だから、彼女は薬を飲んだ。)

終わ、れ……自分、の……望、み..……
(彼女は呟く。自分の望みは姿形関係なく『死』を望む)

これ、を…作、り…上げ、た…人、に…感、謝…を……っ……
(息が苦しくなる。苦しさに耐えきれず壁に寄りかかる。久しぶりの苦しさ。されど、痛さはない。恐怖もない。ただ、ただ、彼女は笑う。笑ったのだ。それも満面の笑みで笑った。これが『死』を望み、受け入れた彼女の笑顔。)

やっ、と……やっ、と……“神様”…に…赦、され…る……
(彼女の恐怖。それは「自分のせいで目の前で誰かが死ぬこと」と「自分が死ねないこと」なのだから、怖がることは無かった。むしろ笑顔を彼女は晒す。彼女を好いてる人達には絶対に見せない満面の笑み。その微笑みを。彼女はここで見せたのだ。その満面の笑みで彼女は石化した。
だが、それは『ギフト 自殺出来ない自殺志願者』が邪魔をする。きっと本当に短時間。数分でパリーンッと音と共に彼女の石化は解かれたのだ。)

っ…………やだ、やだ…いや、だ……なん、で…なん、で……!!
(嗚呼、やはり、自分は死ねない。死ねない自分が怖い。嫌い。感情が歪む。怒りと恐怖と悲しみが交じる。つっーっと瞳から涙が伝う。死ねなかった。また、死ねなかったと。しばらく経ってから彼女涙を拭って立ち去った。)

(こん、なの…で…よか、った…の、かな……)
「君『主人公』には永劫『ガタノトア』がお似合いだ! 恐怖よりも悲哀が勝るとは! 我等『物語』は酷く震えた。此処に在る薬物では死を成せぬ。結局は遊戯だ。児子の絶叫だ。真の終幕を望むならば浪漫に溢れた依頼を選ぶが好い。将来に期待するぞ!」

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