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噴水前の歌広場

PPP一周年記念SS


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 きっと、ここに来たばかりなら間違いなく黙って開けさせていたことと思います。
 ですが、僕は、実はけっこう、変わりました。
 綺麗なものが好きです。
 失われるもの、滅び行くものが大好きです。
 それに必死に抗う姿も大好きです。
 ですが、ともだちは、それとは違うモノです。
「あの小瓶さ。イーちゃんにあげるよ」
「……押し付けられただけにも思えるけど」
「大丈夫だよ。因果は僕のところにあるから。むしろ、持っていないほうがいいって思って」
「……いいけれど」
「ありがと。だいすきだよ」
「…………いいけれど」
 ふいっと目をそらすと、転ぶわよと言いながら、イーちゃんはエっちゃんを追っかけて行きました。
 うん。
 今日もほどほどに、最高です。
 こんな僕にも居場所があるから、この街も、ローレットも大好きです。
 願わくば、もう少しこんな陽溜りのような時間を、僕に。
そう思いながら、先ほどから開かれっぱなしだった扉のノブに手をかけました。
 外は暑く、まだまだ辛いですが。僕はもう少し、生きていようと思います。
「だから、またこんどね」
 誰もいない書庫の中に声をかけて、内開きの扉をばたん、と閉めました。

 

 これはその後イーちゃんから訊いた話ですが、書庫の扉に誰かが泥の手形を付けたそうです。
 内側に付いていたから、ギルドメンバーの誰かの仕業だとぷりぷり怒っていました。

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