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PPP一周年記念SS


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「馬の骨さん助けてくださーい!」
「はぁ?」
 書庫の扉を開けるなり、どさどさと積んだ紙束が崩れました。
 どうやら、また自分の戦術について研究と研鑚を重ねていたようで、紅玉色の瞳はどろどろ濁っているし目の下にはくまがどさどさ積もっています。まるまるっと背中を丸めて文字と首っ引きになっていたのですが、僕らが現れるなりしゃんと伸ばすのは女性としてとても立派だと思います。
「ごきげんよう。いきなりどうしたのよ」
「それが……」
 イーリン・ジョーンズ(p3p000854)ことイーちゃん、通称馬の骨とか司書とか、なんとかかんとか。足りない足りないと言い続けるその人生には正直頭が下がります。いつも必死なその姿は、エっちゃんとはまた違った意味でかわいく、いじましく見えます。己の知らざるを知れば、焦ろうが焦るまいが知れることは知れるし、知らないことは死ぬまで知らないと思っている僕は、ああして身の丈に合わない成果を求め続けることはとてもできそうにありません。
 なので、とても尊敬しています。
「ラァナさん聞いてくださいよ!」
「え? ごめん、考え事してたんだ」
 そんなことを、事情をガーっと説明しているエっちゃんの声に、勝手に腰を落ち着けて楽器をずうずうしく広げ、伴奏を付けながら思っていると、エっちゃんに叱られてしまいました。ふぅん、と言いながらイーちゃんは小瓶をくるくる揺らして覗いています。
「まあ、あんまり聞かなくてもカタラァナの持ち込んだ厄介だっていうのは分かったわよ」
「……名探偵ですか、馬の骨さん」
「違うわよ。なんだかさっきから妙にむずむずとむず痒かったから」
「お風呂はちゃんと入った? イーちゃん」
「身体は拭いてるわよ。そうじゃなくて、何というか……楽しくて堪らないというか、面白くてしょうがないというか、そんな感じ。そしたら扉の外から段々カタラァナの鼻歌が聴こえてきたから、ああそういうことかって思って」
「ラァナさん、道すがらさっき見たお化けの歌ずーーっと私の耳元で聞かせ続けてきたんですよ……えひ、えひひ」
「あぁ。また伝染っちゃったんだ? ごめんね」
 申し訳なさに、頭がしゅんと下がります。
 僕の歌は、ときどき、僕の気持ちを相手にも体験させてしまいます。同じ気持ちになってくれるのはとても嬉しいのですが、誤爆は痛恨の極みなのです。ちゃんと歌詞を一から理解してもらわないと。

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