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噴水前の歌広場

PPP一周年記念SS


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ぎゅうーん。ぴろぴろぴろ。
 あれ? 真っ暗。 ……あ、そっか。
 途中から、盛り上がりすぎて目を閉じて演奏していたようです。
 僕もけっこうぼんやりしたところがありますのでね。
 さてどうかしらと自分ひとりの世界から抜け出してみると、目の前にはすでに誰もいませんでした。みんな聞き終わって、静かに立ち去ったのでしょう。足下に置いていた空の布袋を覗き込んだのですが、やっぱり何も入っていません。
 ひそひそと、声が遠巻きに聞こえます。試しにぽろろん、と楽器を爪弾いて見ると、ひそひそ声は鰯の群れに鼻を突っ込んだ時よりも迅速に散っていきました。
 今日も最高。僕は僕の歌を歌えた。
 そう思いながら立ち上がろうとした時。
 ぬっと、何かが顔を覗き込んできました。
 何かは、何かとしか言えないのですが、それはのぺっと何もついていない目鼻をひくひくと動かして真っ赤な目をぎょろぎょろとさせています。
「こんにちは」
 すぐそこに顔があるのでお辞儀は出来ないのですが、僕は礼儀正しく挨拶をしました。挨拶はとても大事だからです。
 何も見えないのですが、黄色い外套を纏っているように見えるその何かは、僕の挨拶を聞いているのか、いないのか、もごもごと何かを喋ると(とてもなまぐさかい息ですが、僕はあまり鼻が良くないので失礼な顔をせずに済みました)、べっと何かを僕に押し付けました。
 ねっとりした感触に思わず押し付けられた何かを見下ろすと、それはねばついた液の付いた小瓶でした。“みつろう”で栓をされているその中身は、何やら黄金色の液体のようです。
「これは、なぁに?」
 顔を上げて訊いたのですが、そこには誰もいませんでした。誰もいないのは当然です。誰もいなかったのですから。
 ……はて、さて。それにしても、どうしよう。不思議なものを貰ってしまいました。とりあえず開けてみようかしらと思ったのですが、どうもかなり分厚く封がされているようで、かるくコツコツ叩いた位では剥がれないようです。ナイフで削げば開きそうですが、僕は刃物を持っていないので、困りました。
「……開けてくれるひとを、探そっかな」
 ひとりつぶやくと、僕はえいっしょとシンティッザトーレを肩に担いで歩き出しました。

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