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噴水前の歌広場

【イーリン・ジョーンズ】世界の中心で青を叫んだけもの

 それが愛であったのなら。
 そんなに単純であれば、どんなにかよかったろう。

「……はぁ」
 クレマァダ=コン=モスカは、深いため息をついた。
 忙しかった。ひたすらに忙しかった。
 絶海竜を封印し、その足でルル・リェの執務室に蜻蛉返り。父への説明を簡潔に済ませ、海洋と幻想の間で書類をやり取りする手配と遠隔地での意思疎通法の確立、引継ぎを行い祭司長としての業務のうちいくらかの実務を分配しつつ各所へ書簡にてその弁明と陳謝。
 返す刀で早速空中神殿を活用し幻想国へ飛んで早速ローレットへの出頭、諸々の説明を受け各種登録、衣食住の手配を受けひとまずの借宿を確保しさあ一息つけるかと思ったところで無駄に敏捷に本日の祭司長業務が手元に届く。
 鬼の仇のようにハンコを叩きまくって送り返し、さあ食事でもしようかと外に出たところで転んだ子供を助け、泣く子の親を探し、感謝されたはいいがすっかり昼飯時を逃したものだからそれはもう、果てしなく疲れていたのだ。
 そしてそこで、「自分はそもそもこのメフ・メフィートのどこで食事をとればいいのか」ということに気付いていなかったことに気付いてしまった貴族の娘(クレマァダ)は、もうどうにでもなれと噴水にしなだれかかってぐったりしていたようである。
「…………この水、飲んだらだめかのう」

 助けるのは今である。
 見なかったことにするのも、今である。

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参加者向けハンドアウト:
あなたが彼女と出会うのは、凛々しくも雄々しく戦っていたリヴァイアサン戦以来です。
あなたと彼女は幻想にいます。

まだ、彼女とあなたは、ともだちではありません。

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書簡を見ただけの我にだってわかる。
あれは、それほどお主らが……お主のことが大好きだったのだと。
なら……ああしたさ。
(嗚咽は漏らさない。それは空中庭園に置いてきた。
 それでも熱い涙は隠せなく、目の前の女の肩に預けた。
 声の震えはない。そこは完璧だ。モスカの祭司長だ。
それでも、今すぐ顔を彼女に見せられないくらいにはなっていた。
やっぱり、誰かが泣いてくれるというのは大事なのだ)

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