PandoraPartyProject

ギルドスレッド

噴水前の歌広場

【プラック・クラケーン】わりといくつかの冴えたやり方

「遊びに行こうよ。オペラ見に行きたいんだ、僕」

 いつもの如くぼんやりした誘いに応じたのは、芸術に対する興味なのか、それともただ彼女に対する興味であったのか。或いは、己が求めつつも求めていることを認めていない――少なくとも表面上は――父の話を彼女から聞けると思ったからなのだろうか。
 カタラァナ=コン=モスカは、貴族である。それをことさらに意識させられたのは、ある人物との邂逅を経たが故だ。
 海賊、否、魔種、否、先達、否。では父――これも否。己にとって、その是非は於いてあまりに受け止めるに大きすぎる影響力を持った男、オクト・クラケーンの言葉を受けたローレットは、その対策をネオ・フロンティア海洋国に一任し、結果海洋国は、それらに対する有効な対策を打てる者に着目した。
 それがコン=モスカ。即ち彼女の一族である。
 そう知っていても尚、あまり実感はなかった。
 男にとって少女は、イルカの因子を持つ海種であり、父との思い出を持つものであり、歌を好むものであり――そして。
 そして?
 そして己は、それ以外に何も知らないことに改めて気づいた。
 ふっと横を向くと、丁度彼女は第一幕の盛り上がりの一幕である歌を目を爛々と輝かせて拍手をしている。

「ヤンキーは、世界のいずこであろうと」。
おそらく、旅人が持ち込んだいくらかある歌劇のうちことさら有名なひとつであるそれは、もしかしたら男もあらすじくらいは知っていたかも知れない。
 異邦の男が妓楼の女と恋に落ち結婚する。
 しかしその男は母国に帰り妻を持つ。
 待っている結末は、女の自死だ。

 どうして? と男――プラック・クラケーンは思う。
 納得は行かないに違いない。不幸な女は死を選び、のうのうと自由を謳歌した男は失意に陥る。
 それを以て、“綺麗”、と彼女は宣ったのだ。

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参加者向けハンドアウト:
 ここは幻想にあるうちで、名のある方に入るオペラハウスです。
 貴方は、“彼女”と共にオペラを見ました。
 それが何幕かのうちの休憩時間でも構いません。
 全て見終わった後でも構いません。
 貴方と“彼女”は、オペラ『蝶々夫人』を見ています。或いは、見ました。
 オペラハウス内に設置されている軽食や飲み物が摂取できるラウンジに、貴方と“彼女”はいます。
 それを見終わって余韻に浸っている“彼女”に、貴方は何か声をかけて下さい。
 まったく的外れでも構いません。
 感想などなくても構いません。
 今“彼女”は、貴方の話を求めています。

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うーん……綺麗、綺麗かぁ……
(軽食を時折口に含みながら彼女の言っていた綺麗について考え込む。プラック・クラケーンは恋を知らぬ、だからこそ劇中の男が女と恋に落ちるという部分に納得は行かなかった、帰りを待つ妻への不義理も同様に、だ。それに結末は彼にとって苦手とする物だったうえに、何処となく…父への許せない部分を思い出してしまうのでお世辞にも綺麗だとは思えなかった。けど、嗚呼、確かに女の選択は曖昧ではあるが綺麗という感想を抱く事に納得が行く)
(何故そんな感想だったんだろう。彼女を眺め聞こうとするが…)
あー……此処の軽食美味しいっすねー、カタラァナさん。
(余韻に浸る彼女へ水を差してしまうという考えが脳裏を過り他愛のない言葉になってしまった)
……え?
ああ、うん、そうね。ごはん。
ごはん。ごはん?
ごはんたべてた? 僕。
何これサンドイッチだ。プラックくんが頼んだの?(口の端にきゅうりのサンドイッチからはみ出たマヨネーズを付けている)
ああ、うん、頼んだのは俺っすね。
えっ、まさか、さっきまで上の空で食事してたんすか
そんな夢中になるっつー事はよっぽど満足のいくオペラだったんすね…
っと、口の端、マヨついてますよー
(紙ナプキンを手に取り、カタラァナの口端を拭こうして)
あっ、すみません、自分で拭きますか?
(ピタリと止めて、紙ナプキンを差し出す仕草を行う)
ん。
(と顔を差し出す。いかにも“僕は他人にやってもらうことに慣れている立場ですよ”という風。)

うん、面白かった。
それにとってもね、綺麗だった。
不義理な男に不出来な女に不幸な子供。とってもとっても不合理な結末。
だからとっても綺麗だったよ。
(「さよならかわいい坊や」。物語を結ぶアリアをかわいく口ずさんだ。
母の情念というものはまだ宿らないので、それはただのかわいいうただったのだけれども)
はいはい、んじゃ拭きますからね、動かないでくださいよーっと
(いかにもな風にああ、そういえばカタラァナさんは辺境伯の家だった…まぁ、拭かれるのが嫌じゃないなら良いかと表情を緩めつつナプキンでカタラァナの口元を拭く)

不合理が綺麗…っすか。
こう、具体的にはどうして綺麗だなぁって思ったんすか?
(かわいい歌を耳に留めつつ、軽食の飲み物を一口啜る)
んー。
(いかにも僕は貴族である。
でも貴族だって口を拭うくらいは自分でやるものであって、ここまでなまけものなのは僕のなまけ性によるものなのだ。
でも教えない。だって言わなきゃ色々やってくれそうだもの。
と、そういうあざとい計算は実に働く娘なのだった)

ん? だってさ。
こう……上手くいっているのが上手くいくのは、道理に沿うもの。
お金があって家庭に恵まれて……って、もちろんそうだからと言って幸せとは限らないけどさ。それは合理的で、自然だよね。

でも、そうじゃなくて、傍から見たら不幸せで、ああなんて可哀相なんだろうっていう人生をさ。それでも自分の意志で貫き通すのは、不合理で、不自然で、だけどだから、こころの力を感じるじゃない?

不合理でも、不幸せでも、曲がっていても、“そう”と決めた道を押し通すのは――僕はとっても、綺麗なのだと思うなあ。
よいしょっと…うしっ、拭けたっすよ
(そんな考えを彼は露知らず、まったくしかたないなぁ、カタラァナさんは、と、父性にも似た感情…父性かこれ?兎に角、拭き終わり、ナプキンを近くのゴミ箱に捨てようとするも無かったので空皿の上に丸めて置いておく)

ふんふん、ふーん。
なるほど、カタラァナさんはそういう人の意志つーもんが好きなんすね…?
確かに、苦難の道を自分の意志でっつーのは心の力を感じてかっけぇーすね。俺にも分かります。
…なるほどなぁ、そういう見方があんのか…不幸の方ばかりに目が行ってましたよ。
……ふしあわせなのはだめ?
不幸は、なにか新しいことの前触れかも知れないよ?
でも、どうやら君は、そういうのは嫌いみたい。
それは、君の生い立ちにも関係してくることかな。もしかして。
まあ、そっすね、新しい事の前触れっす。
悪い事が有るから現在も有る、そうして今になってく。
分かる、分かるんすけどねー、でもなるべくなら幸せの方が良いじゃないすか。
んで、生い立ちっすね…ふっ、くかかっ、違いますね。
コイツは俺の、俺だけの考えっす。
生い立ちだとか影響だとかじゃなくって
いつの間にか芽生えてた俺の信念っすよ。
ふぅん。
(脚を組んで、両手で自分の頬を包んでテーブルに肘を付き、しげしげと目の前の顔を見た)

Tutto questo avverrà,
te lo prometto
Tienti la tua paura
Io con sicura fede l'aspetto♪

……なら蝶々婦人は、全てを知らない方が仕合せであったね。
愚かに盲いて愛人に甘んじた方が、せいぜい周りに後ろ指をさされるくらいで済んだもの。
少なくとも僕には、それはとても愚かで見栄っ張りな自刃に思えたのだけれど――
――どういうふうにかんがえるのが、ただしかったのかな?
ーー男が強くあれば良かった。妻を2人も持てる程に、1人だけを愛せるくらいに。
ーー女が諦めれば良かった。そうして子供と共に前を向いて歩ければ良かった。
結末の時点でどう考えれば良いかっつーなら……怨む、怒る、妬む、なんつーか、負の感情を抱ければ、少なくとも前へ進めたんすかね
ーーけど、どれも正しくは無ぇ。
だから蝶々夫人は蝶々夫人だけだと救われねぇ、幸せにはならねぇ。
だからどう考えるのが正しいかじゃなくてね。
どうすれば良かったかになっちまうんすけど。
誰かが手を差し伸べてれば良かった、死ぬのを止めれば良かった。
夫人の意志も決意も絶望も無視して、我儘に救いに行けば良かったんだ。
(ふ、と冷静になる。何を語っているんだと恥ずかしくなり
更に顔を見られているのに気付き恥ずかしさが増して)
っと、すみません。熱くなっちゃいました。
(思わず目を背け、ストローでジュースを飲み始める)
んふ、恥ずかしがらないでよ。
感想戦だもん、一生懸命話してくれないと僕のほうがはずかしくなっちゃう。
ねえ、プラックくんは、なんかさ。
熱く……っていうか、本音が出ると、奥にしまっちゃうよね。
それは、どうして?
…たっく、俺だけ恥ずかしいのって悔しいじゃないすか
あー、それはっすね…よく分かん無ぇっす。
グドルフさん達と話した時はそんな事無かった気はするんすけどね。
んー…なんでだろうな、相手がカタラァナさんだからとかか?
僕がいじわるばっかり言うから、返事をするのに恥ずかしくなってしまった……とか?
いや…その…そういう訳じゃないんすよ。
意地悪とは思った事ねぇし…まぁ、人の気にしてる所を的確に突き刺さしてくるな、とは思った事あるんすけど
ただ、こう、なんでカタラァナさんだからなんだ?って自分で言った事を疑問に思うつーか。
どう返したら良いんだろうなって墓穴掘って言葉に詰まった感じっす。
んで、いざ、意地悪なんかじゃねぇって伝えようと思ったら。さっきの傍目にはナンパにしか聞こえねぇって…うん、恥ずかしくなって…
だぁぁ、うだうだ何言ってんだ、俺ぇ!?
(頭を抱える)
じぶんの しらない じぶんのはなし
しっているのも じぶんだけ♪

うん、墓穴っていうか、ぼこぼこっていうか。
でも自分の感情を掘り返すのは大事だよプラックくん。
ぼこぼこでも、ちゃんと掘り返して言葉にすればまた違うんだから。
僕は、俄然興味が湧いてきたよ。
うっ…す…(羞恥の残響を残しながら頷く)
ああ、恥ずかしい…最初はオペラの話だったのになんでこうなったか…あっ、俺のせいか。

…俺ばかり墓穴掘ってるのもシャクだな…
(興味を沸かれるのは正直嬉しいけどまた墓穴を掘りたくないし…)
あー、よし、俺、カタラァナさんの事を聞きたいっすね!
(話はこれでおしまい。彼と彼女が何を話し、どう終わったかは当人と神のみぞ知る話。
確かな事は青年は自覚無き◯◯を自覚したかも知れないという事。
そして、未来にて、女は死を選び、男は失意に陥る。まるで歌劇の様に。
彼女は自身を綺麗と思えただろうか、俺の後悔は募るばかりだが。
彼女が望む様に前へと進むだろう。
カタラァナ=コン=モスカ。
歌の大好きだった貴方。
前へ進む人を愛した貴方。
皆の為に、役目に殉じた貴方。
そんな貴方へ、只々、礼を。素敵な時間を有難う。)

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