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at no.9

緑の廃屋(1:1)

王都の市街とスラムの中間地点、通り一本を隔て街並みの変わる境界線上、そこには覆い茂る緑と共にひっそりと佇む洋館らしき建造物があった。
錆びた門を軋ませて一歩その敷地に踏み入れば、朽ちて色を失った屋敷とは裏腹に、もはや庭木とも呼べぬ植物達に溢れる生命力を夜の闇の中でも確りと感じられた。

「孤児院だったらしいぜ、此処。俺がガキの頃からこんなだけど……っと」

シラスは屋敷の裏口の方へ回ると、鞄から鍵束を取り出して見せる。
盗んだ、譲り受けた、不正に複製した。
その数は少年が幻想の街を彷徨う足跡そのものだ。

やがて一つを屋敷の戸に差し込んで捻ればカチリとした金属音。
ほっと小さな溜息をひとつ。

屋敷に入ると寂れた空間が天窓から降り注ぐ月の光に照らされていた。
床にはまばらに朽ちかけたインテリア、幼児用の玩具らしい人形や木馬などが部屋の隅に寄せられている。
そんなヒトの残り香を包み込むように、木々の緑がもう屋内まで及ぼうとしていた。

(アレクシアさんとの1:1のスレッドです、他の方の書きこみはご遠慮ください)

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……っん……。

(微笑んで語りかけられる言葉の一つ一つが胸に沁みるようだった。
 声にすれば潤んでしまいそうで、言葉を返せずに繰り返し小さく頷く。

 そして思う。
 2年前の自分ならどう感じたか。
 世間知らずを鼻で笑ったかも知れない。
 それとも綺麗事だと噛みついただろうか。

 けれど今は違う。
 隣に座る友達の想いの強さを知っている。
 何より、信じたいと願う自分もいる。

 言葉が途切れると伏せていた視線をやっと上げて目を合わせ)

必要だよ……アレクシアがいてくれたら、怖いものなんて無い。
きっと確かめてみるから……その時、側にいてよ。

(ランタンの芯が揺れる、2人の影が一瞬縮んではまた元に戻る)

うん……俺さ、独りになってからローレットに来る前まで、毎日がすごく長く感じたんだ。
何をしても混ぜ過ぎた絵の具の色みたい。
暗くて、つまらなくて、それが自分なんだと思ってた。
今はそんなことない、この1年で退屈なんて無かったし、アレクシアと友達になれたからね。

だから、俺が何か持ってるとしたら、それは皆が、キミがくれたものだから……大切にするよ、自分のこと。
アレクシアがそこまで言ってくれるんだもん……約束する。

ああ……本当に、時間が過ぎるのを忘れちゃうね……灯り切れそう。
……困ったな、全然眠たくないや。

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