ローレットにほど近いとある居住地区の奥、窮屈に並ぶアパルトメントの隙間から続く路地裏にその店はあった。色褪せた看板にからは辛うじて『Ｃａｆｅ』の文字が読み取れる。呼び鈴のついた戸を開いて入店しても従業員らしいエプロンドレスの少女は一瞥もくれない。
代わりに狭い店内にただ一人の客、ソファに踏ん反り返っていた少年が身を起こすと小さく手を振ってくる。
――シラスだ。

へへっ、だろう？
趣味みたいな店だけれど味は本当に大したものなんだ。

（得意気に笑ってペロリとケーキを平らげてお茶を啜り）

あっ、鋭い。
住人の中に現状を不審に思ってる人がいるかも知れないね。
接触出来たら大きな情報源になると思う。
ぜひ探してみたいな、上手く見つける方法を考えてみる。

後は……野菜を毎日卸してる商人の話もあったからさ。
市場で流通を追ってみるのも良いかなと思ってた。
それと漠然としてるけれど、時計に関する何か。
この街の特徴と言えばやっぱり時計だから何か関係がある気がする。